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金沢市民のメンタリティは「閉鎖的」?

──このインタビュー記事を読んでいる人は「なんで金沢の歯医者さんが、そんなリスクしかない案件に足を踏み入れているの?」というモヤモヤ感が募っていると思うんですよ。もともと小島さんはサッカーとは無縁の人生を歩んできていて、もっと言えば生まれも育ちも金沢ではない。それなのになぜ、サッカーを通じて地域を盛り上げようとしているのか。そのあたりについて、あらためて語っていただきたいと思います。

小島 わかりました。今でこそ、人生の中で最も長く暮らしているのは金沢ですが、それまでは転々としていたんです。生まれは神戸で、幼少期を札幌で過ごして、交換留学生でニューヨーク州のど田舎で暮らして、そこで今のメンタリティが育まれたんだと思います(笑)。そこから大阪の歯科大学で学んで、娘が生まれたのを機に金沢に移り住んだというのが、ざっくりとしたところです。

──つまり、当初はまったくよそ者の状態で、金沢で暮らすことになったんですね?

小島 そうなんですが、ある人から、こんなことを言われたんです。「大きなことを成すのは、よそ者、若者、ばか者だよ」って。

──その話は『股旅フットボール』の金沢の章で書きました!

小島 そうですよね。僕も同じことを聞かされていたんですよ。もちろん、今では若者でもないですが、よそ者とばか者という要件は今でも満たしています(笑)。僕も金沢に来て35年になりますけれど、こっちに来た当初は、よそ者に対してある種のよそよそしさを感じて「閉鎖的な街なのかな?」って思いました。

──どんな時に閉鎖的と感じましたか?

小島 たとえば、たまたまお店のカウンター席で隣に座っていたおじさんから「君はどこの高校?」って聞かれるんですよ。名門の金沢大学附属、あるいは県立金沢泉丘とかだったら「すげえな」。星稜だったら「お前もか!」みたいな感じで。あるいは「どこの校下(こうか)だ?」と聞かれることもあって。

──「校下」ってなんです?

小島 小学校や中学校の通学区域のことを指す、金沢独特の言葉だと思います。つまり出身高校だけでなく、中学や小学校まで聞かれるわけですよ。それで僕みたいに、まったくカスリもしない人間だとわかると、とたんに態度がよそよそしくなるんですよね(苦笑)。

──非常にわかりやすい(笑)!

小島 もうひとつ、金沢のリアルな空気を理解できる言葉があります。僕は開業する前、金沢の大学病院に勤務していたんですけれど、当時の教授からこんなことを言われたんです。「小島くんは『出る杭は打たれる』という言葉を知っているよね? 金沢では『出る杭は引っ張られる』風土があるから、上ばかりでなく足元もちゃんと見ておかないと駄目だよ」って。最初は「はあ?」と思いましたけれど、これほど的確なアドバイスもないと、あとで思い知りました。

──知れば知るほど興味深いですね。そんな小島さんも金沢に35年も暮らして、今ではすっかり「地元の人」になったんじゃないですか?

小島 おっしゃるとおりです。先ほどから閉鎖性の話をしましたが、金沢の人はコミュニティの中に溶け込んで認められると、逆にすごく親身になってくれるんですよ。閉鎖性の裏側には、そうした温かさも持ち合わせているんです。さっきから悪口ばかり言っていますが(笑)、そこのところは強調しておきたいですね。今回のチャリティーマッチもそうですが、金沢のいろんな人たちにお世話になりながら、何とか開催の運びとなりましたので。

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