【サッカー人気3位】【試合取材後記 今日のミックスゾーンから】

宇都宮徹壱ウェブマガジン

「今そこにあるサッカーを愛せ!」とは何か? ロック総統から次世代サポへの伝言<2/2>

<2/2>目次

*「じゃあ、総統が自分で経営をやってみろよ」

*J3ルーキーのテゲバが躍進した理由とは?

*子供にもクラブにも成長曲線があるのだから

「じゃあ、総統が自分で経営をやってみろよ」

──先ほど総統は、奈良に何度か行ったことがあるとおっしゃっていました。あらためて、現在JFLの奈良クラブが健全に盛り上がっていくにはどうすればいいのか、考えていきたいと思います。まず、総統が奈良を訪れた時の印象って、どうでしたか?

総統 当時の奈良サポに招待してもらったのは、2014年から15年にかけてですから、もう随分と昔ですよね。JFL昇格1年目の2015年には、なぜか試合前に流しそうめんをやっていて、やたらとそうめんを食べた記憶が鮮明です(笑)。それから岡山一成選手とラジオで対談したり(参照)、まあ楽しかったですよね。

かほ そんなにそうめんを食べたんですね(笑)。私の地元の三輪地方では、そうめんが有名なんですよ。

──当時の奈良サポって、どんな感じだったんでしょうか?

総統 実は「Jに行くことがすべてではない」という感じの人がけっこういて、すごくシンパシーを感じていたんです。私みたいな九州の田舎者とは違って、奈良の人たちは東京に無条件で憧れるわけでもなく、地元のいいものをよく知っているんですよね。京都よりも歴史があるだけあって、いい意味での唯我独尊なところが感じられました。

かほ その後、ゴール裏の顔ぶれも変わって、今は「昇格しなくてもいい」というサポは少数派になりましたけどね。あと「唯我独尊」ということですが、逆に野心を抱いて東京に出てくる人が、奈良では少ないんですよ。私の同級生を見ていても、高校卒業後に地元で就職して、結婚して子供がいるという人が多いです。私みたいに東京に出てきた人間は、かなりの野心家だと思います(笑)。

総統 今の社長の浜田さんも野心家ですよね。その前の中川政七さんも。クラブを船に見立てた場合、こういう人たちが燃料を入れてくれることで、船は進むことができます。けれども、燃料を入れる人の意思のみによって、船の方向は決まるわけではない。やっぱり、地域に暮らす人とって幸せに感じられる方向に、船は進んでいくべきですよ。

 こういうことを言うと「じゃあ、総統が自分で経営をやってみろよ」みたいなリアクションが必ずあるんですよ。でも、私が言えるのは哲学だけ。アリストテレスと一緒ですよ。アリストテレスは哲学者として、たくさんのいい言葉を残しましたけれど、政治家や実業家として成功したかといえば、絶対に無理だったと思います(笑)。

──確かに哲学者って、経済的に不遇な人が多いイメージですよね。

総統 結局、アリストテレスは多くの賛同者が得られず、学校を作ったけれど教育者としては大して活躍もできず、失意のうちに死んでいます。孔子だってそう。彼は政治家になりたかったけれど失敗して、弟子たちに食わせてもらいながら生涯を終えています。哲学者というのは理想が高すぎて、なかなか現実と噛み合わないんですよね。

かほ へえ、初めて知りました! あらためて総統に聞きますけど、奈良クラブは無理してJリーグを目指さなくてもいい、ということでしょうか?

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