【アカデミーレポート】昨年の借りを返した長崎総合科学大学付属高校。8度目の全国への挑戦
『第100回全国高校サッカー選手権大会 長崎県大会』を制した長崎総合科学大学付属高校。混戦も予想された今大会だったが、終わって見れば誰もが納得する優勝達成だった。
長崎総大附属の2021年は最悪からのスタートだった。1月17日の新人戦県大会初戦となった2回戦で長崎日大に0-1で敗戦して始まったのだ。前年末の選手権長崎県予選決勝でも敗れていたことから、総附時代の終わりを指摘する声も多かったと聞く。2月に国見高校と創成館高校が九州新人戦を戦っているときも、大会の喧騒をよそに長崎総大附属高校の子どもたちはひたすら走る・・彼らの県王座奪還への挑戦はそんな中で始まった。
一つの形が見えてきたのが夏の県高総体だ。新人戦や県リーグでは4-4-2、ときには3-4-2-1で戦っていた長崎総大附属だが、この大会では竹田天馬を前目に置いて、高良陸斗・別府史雅と中盤を構成させる4-2-3-1をベーシックな形として戦った。中盤の底に別府が入ったことで攻守のバランスが整えやすくなったチームは、ハードワークも徹底されたことで急速に安定感を増し、見事に県高総体を優勝する。もし、昨年の選手権予選・年頭の新人戦初戦敗退に続き、夏の高総体を落としていればチームに動揺が広がったかもしれない。そういう意味では高総体で踏みとどまれたことが長崎総大附属にとっては大きかった。
また今年は例年以上に先発の固定化が早く、中盤が竹田・高良・別府、最終ラインに児玉勇翔・原口玖星・大谷幸希、サイドに芦高佑、トップに西岡紫音というメンバーは夏前からほぼ固まっており、連携面の深化が早かった点も見逃せない。徹底的に選手権から逆算してチームを作る小嶺忠敏監督にしては珍しいことだが、インターハイの時点でチームをある程度の完成度に達していたのである。そのために選手権初戦の佐世保実業戦では、徹底したスカウティングからの長崎総大附属対策に苦戦することになるのだが、佐世保実業を振り切ると、次戦の南山に5対1、準決勝で日大に3対0で快勝し、決勝でもしっかりと創成館に2対0で勝利した。
例年、小嶺忠敏監督の率いるチームは、スコアはともかく、大会を勝ち抜けるときの力強さが際だっているのが常だ。だが今季の長崎総大附属は、そういう力強さを一定度こそ感じさせたものの例年ほどではなかった。どちらかと言うと、手堅さの方が光るチームではあったが、それこそが大会を制した理由でもあったと思う。
トーナメントの大会を勝ち上がるのに必要なのは、ベストやベターな状態での強さではない。あまり良くない、あるいは悪い状態でも勝ちを狙えるパターンを持つことである。今大会、各チームが本来持っている力強さでは、長崎総大附属と優勝を争った創成館・国見の間には大きな差はなかった。あるいは良い状態同士なら、長崎総大附属が一番ではなかったかもしれない。だがそれは悪くない状態、良い状態での話であり、そうではない状態であれば、長崎総大附属>創成館>国見>日大の順だったのではないか。このあたりの強化手腕は小嶺監督の経験による賜物だろう。
11月15日、『第100回全国高校サッカー選手権大会』の組み合せ抽選会が行われ、長崎総大附属の初戦は北海道代表の北海高校戦に決定した。小嶺監督は選手権出場を決めたあと、チームを一旦リセットし再競争をうながす。県大会を制した翌日から、その競争は始まっているのだろうし、ここから対外試合も積極的にこなしていくだろう。
恐らくだが、本大会でも竹田・高良・別府・原口・児玉といった軸となる選手は不変だろう。そこへどれだけ新戦力が台頭し、これまでの選手が成長するか。そこに全国での成績は関わってくるはずだ。2年ぶり8度目となる選手権本大会でどんなチームを、どんな戦いを、どんな成績を見せてくれるのか注目して待つとしよう。
reported by 藤原裕久