長崎サッカーマガジン「ViSta」

【アカデミーレポート】「プリンスリーグ九州 第7節 V・V長崎U-18 対 国見高校」試合レビュー~対照的な道のりの中で激突した県内2強。国見が粘りの守備からワンチャンスを生かし、V・ファーレン長崎からプリンス初勝利をあげる!~

「長かった」
試合後にコメントを聞きに行くと、国見の木藤健太監督は最初にそう呟いた。九州新人戦で優勝して以降、思うような成績を出せず苦しんできた中でようやくつかんだプリンスリーグ初勝利である。その言葉には安堵・手応え両方の気持ちが感じられたし、おそらく、国見のスタッフ全員が同じ思いだったことだろう。

一方、敗れたV・ファーレン長崎の原田武男監督は「選手たちがどうしてしまったのか・・、前半、前にいかなかった」と悔しさを滲ませながら「課題はハッキリしていて、後半は修正もできた。ここで一回勉強させてもらったと思って、またやっていきたい」と、敗れてなお収穫をつかもうとする姿勢が感じられた。

V・ファーレン長崎U-18と国見高校。長崎アカデミー年代トップ同士の一戦は、両チームが「今後」を考えるという意味で非常に重要な一戦になった。

試合を通じて目立ったのは、国見の体を張った守りと、攻守切り替えの徹底だった。2年生主体のチームを支えたDF市田広海の落ち着いた対応や、2年生GK今村泰斗の積極的なコーチングの前に、V・ファーレンの攻撃は・・特に前半に停滞した。V・ファーレンが後半並の積極的な仕掛けを見せていれば、あるいは国見の守備はバランスを崩したかもしれないが、前半をしっかりと守り切れたことで国見の守備は、その集中を増していった。

カウンターは守備が安定してこそ威力を発揮する。そのセオリーどおり、86分に高木佑介が左サイドからゴール前に送ったボールを古谷莞大が決めて国見が先制を奪う。一方のV・ファーレンは鍋島暖歩・中島聖翔・池田誉らが果敢に攻めていったが、最後までゴールネットを揺らすことはできずに試合を終えた。

この試合に至るまでの両チームの歩みは対照的だった。だがその根底には一つの共通していたものがある。それは、どちらも敗戦を無駄にしないチャレンジでここまで来たと言うことだ。

県新人戦・九州新人戦を制して久しぶりに力強さを示したものの、プリンスリーグ九州で苦戦を続け、県高総体でも準決勝で敗退。年代別代表候補の北村一真・緒方要もプレーに悩みを感じさせていた。そんな中で木藤監督はときに悩みながらも強くなるための試行錯誤を変えなかった。この日、スタメン11名中8名が2年生という点にも、そのあたりのチャレンジが透けて見える。

逆にV・ファーレンはプリンスリーグ初戦で黒星スタートとなったものの、早々にチームを立て直すことに成功した。その原動力となったのが、原田監督の思いきった決断と1年生の七牟禮蒼杜や池田誉らの積極的な起用である。その結果が暫定とは言えリーグ首位であり、危なげない九州クラブユースでの代表権獲得、そして七牟禮の年代別代表候補への選出だ。

どちらも監督が無難な立て直しでなはなく、学年関係なしでの競争をチームに求めて、負けを力に変えてきての立て直しだった。ならば、この試合も両チームにとってはどう生かすかが重要だろう。

悩みの見えた国見は、この試合で明らかに守備の立て直しを見せた。だが得点シーンで古谷莞大は最初のトラップをミスしている。その後、もちなおして冷静に決めたことは素晴らしいが、相手の対応次第ではミスの時点で得点チャンスを逃す可能性もあった。何より90分で放ったシュートは2であり、守備はともかく攻撃にはまだ課題を残した。

一方のV・ファーレンも合計8本のシュートを放ったが前半は1本のみに終わり、チャンスを決めきれないシーンが目立った。コンディションの問題で七牟禮が途中交代というアクシデントがあったとは言え、さらに高みを考えると厳しい数字だ。

国見は夏休みを利用しての関西遠征を検討しているという。そこで数多くの実戦をこなして9月から再開されるリーグ戦、ひいては選手権県予選へ向う予定だ。V・ファーレンは23日から群馬県で行われる「2021年度 第45回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会」に出場し、レベルの高い実戦を経験することになる。

それぞれ、夏にどう成長するか。両チームにとってその結果で、この試合の本当の価値が決まるだろう。

reported by 藤原裕久

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ