長崎サッカーマガジン「ViSta」

【トピックス】「7月12日にV・ファーレン長崎が平和学習を実施~長崎のクラブとして、こういう取り組みの日があること、伝えることの重要性~

12日、V・ファーレン長崎は長崎市の原爆資料館で、トップチーム全選手・スタッフが参加しての「V・ファーレン長崎平和学習2021」を行った。平和学習では被爆二世の方による講話を聞き、平和祈念ユニフォームと7/11平和宣言文の寄贈や、平和の灯キャンドルの絵付け、献花などを行った。

チームの平和学習は毎年行われている。一部にはシーズン中に実施する必要性に疑問を感じる方がいるかもしれないが、必要性は十分にある活動だと思う。


「長崎で生まれて、広島に選手として長く被爆地にいたんですが、長崎と広島は原爆や戦争の知識が豊かで深い。他県の人は、広島に何月何日の何時に原爆を落とされたかとか、一般的にはあまり記憶してなかったりするんですね」

平和学習後、松田浩監督がそう語ったとおり、被爆地を身近に触れて来た人と、そうでない人の間には少しの違いがあったりもする。かく言う私は、生まれも育ちも長崎で、家族・親類・知人には被爆者がいるのがあたり前で、物心が付く前から平和教育を受けてきたのだが、大学進学で県外へ行って、他県では原爆の日に小中学校が登校日ではないこと知って驚き、応援の中心を「爆心地」と呼ぶ人がいることに違和感を感じたりした。だからこそ、知っていることを伝えるのは重要なのだろうと思う。

「どうしても、身近に感じている人じゃないと自分事としては考えられない。だから、そういうところにいて、発信力のある立場にいる以上、(平和や原爆について)たくさん発信していくことは義務なんです。(松田浩監督)」

「昔は平和を学ぶばかりだったが、今は学んだことを発信したいと思っています(毎熊晟矢)」

「サッカーを通じて、(平和を)どう表現できるか。それを少しずつでもやっていきたい。(平和について)勉強したので、責任を持って伝えていけるようになりたい。(五月田星矢)」

監督・選手がこうやって伝える重要性を感じてくれるだけでも、平和学習をおこなう価値はある。

「平和にはコミュニケーションを取るのが大事で、人が集まって何かをやれるのは平和なとき。今はそれができないけれど、たくさんの人が関心を持ってもらえる取り組みをしていきたい」と語る髙田春奈社長は、今後もサッカークラブとして社会との連携活動を継続していくつもりだという。

昨年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のために、リーグ戦が長い中断期間に入っていたとき、サッカー界いやスポーツを含む全てのショービジネス、エンターテインメント業界は、『自分たちの仕事は平時であってこそ成り立つ』ことを思い知らされた。

災害復興などのための希望や、停滞感の打破ためにスポーツの力が使われることはあっても、それはそのときだから成り立つものであり、継続的に成り立つという意味では、世の中が平穏であることが、エンターテインメントの必須条件である。そういう意味でも、シーズン中に平和や社会に感謝をささげ、それが続くように祈る平和学習の日が1日あるのは良いことだと思うし、長崎のクラブとして必要なことだと思う。

reported by 藤原裕久

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