【コラム】江川湧清の公式戦初出場に思うこと ~アカデミー出身選手の、トップチームでのプロデビューという小さく、そして大きな一歩~
2016年10月9日、『2016 Jユースカップ 第24回 Jリーグユース選手権大会』(以下:Jユースカップ)の1回戦、『ベガルタ仙台ユース対V・ファーレン長崎U-18』は、V・ファーレンのアカデミー史上に残る大激戦だった。

2016Jユースカップ1回戦に臨むV・V長崎U-18
対戦相手のベガルタユースはJユースカップ開幕の約2週間前に、所属する『高円宮杯U-18サッカーリーグ2016プリンスリーグ東北』で2年ぶり3回目の優勝を達成。対するV・V長崎U-18は『高円宮杯JFA U-18サッカーリーグ 長崎県リーグ1部』所属で、カテゴリー的にはベガルタユースより一つ低い。それでもV・V長崎U-18の選手たちは躍動した。
前半8分に失点しても、後にクラブ初のトップチーム昇格を果たす林田隆介(現FC徳島)の一撃で同点とし、1-1で迎えた後半アディショナルタイムに、岡野凛平(現 日本文理大)の一撃で勝利をグッと引き寄せた。だがホームで戦う東北王者の意地か、ベガルタユースも直後に同点へと追いついてみせる。

同点弾を決めた林田隆介は、後にアカデミーから初のトップチーム昇格を達成
2-2で迎えたPK戦でも両チームは譲らない。ともに5人目までが全員成功し、勝負はサドンデスの6人目へと突入する。ベガルタユースの6人目、樫崎桂太がPKを成功させ、V・V長崎U-18の6人目のキッカーがペナルティスポットへと向かう。

PK戦6人目のキッカーとして登場したのは・・・
数秒後、彼は顔を覆ってペナルティスポットへうずくまった。彼に向かって挑発的に勝利を鼓舞するベガルタユースの選手を、別のベガルタユースの選手が遠ざけながらフォローの声をかける。その声が聞こえているのか、いないのか。彼は周囲にうながされてもしばらく立ち上がれず、味方に引き起こされてもなお泣いていた。
その選手の名は江川湧清。まだ彼が高校1年生だったときの話である。
それから4年。9月23日のJ2第21節、町田ゼルビア対V・ファーレン長崎で、江川湧清はプロとしてJリーグのピッチに立った。翌週の第22節では、ホームのトランスコスモススタジアム長崎で先発フル出場を達成。ミスはあったものの、セットプレーから2度ヘディングを放つなど悪くないプレーを見せた。
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