中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】雨の街で見つけた“タバコ投票箱”と、行きたいのに行けない投票の話

こんにちは。ドイツの日常コラム・ゆきラボです。

今年の秋、こちらでは本当に雨の多い時期が続いています。ドイツには「黄金の10月」という言葉があり、たいてい10月は秋晴れの爽やかな日が続いて過ごしやすいことが多いのですが、今年は雨が多くてどんよりと暗く肌寒い日が続いています。何か楽しいことやリラックスできることを積極的に見つけないと、気分もどんどん暗くなってしまいそうです。

そんな秋の日ですが、こちらフライブルクのとある住宅地です。もともと路面電車が通っていた通りだったのですが、近隣の開発に伴って路線が変更になり、今では線路跡だけが残っています。交通量が減った分、道の片側には駐車場・駐輪場とともにベンチやプランターが置かれています。撮影したこの日は雨でひっそりしていましたが、これがもし晴れた午後だったら、コーヒーやビールを片手に、近くの集合住宅の住民がちょっと一息入れたりしているのかもしれません。

コーヒーやビールとともにタバコをたしなむ人もいそうですが、この一角にはこんな箱も置かれています。こちら、イギリスでスタートした取り組み“Ballot Bin”。ドイツでは“Kippenkasten”という名前で呼ばれています。日本でも”ASK THE TOBACCO”という名前で設置されているそうなので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これは、タバコの吸い殻で2択のアンケートを取ることができるというもの。吸い終わったタバコを、投票したい方に捨てるだけのいたってシンプルな仕組みです。箱の前部は透明で吸い殻の量が見えるので、タバコを吸わなくても投票結果を見て楽しむことができます。

日本での紹介記事によると、発祥の国イギリスでは「スマホはアップル派?アンドロイド派?」「映画『トレインスポッティング』(懐かしい!)、レントンとベグビーだったらどっちが好き?」という、吸い殻を使ってつい「こっち派!」と参加したくなるような質問がセッティングされています。

地元紙Der Sonntagに載ったKippenkastenの記事。どっちにも決められなくて2本吸って1本ずつ入れる人とかいそう

一方、こちらフライブルクはというと、設置時に書かれた最初のアンケートは
「ベスト監督はシュトライヒ?フィンケ?」
という、なんというか非常にフライブルクらしい直球の質問。SCフライブルクファンならタバコ1本では済まない、永遠に両監督の偉業を語り合いたくなるような、答えの出ない問いなのではないでしょうか。

ちなみに私が撮影に行ったときは「このKippenkasten、クール?ダサい?」という2択に質問が変わっていました。今のところ、クール!に軍配が上がっているようです。タバコ投票箱の効果はてきめんで、設置された地域や国にもよりますが、路上にポイ捨てされる吸い殻が40%~70%以上減少した場所もあるそうです。

Kippenkastenは喫煙者なら誰でも投票できるアンケートボックスですが、投票したいのにできない大事な選挙の話を後半に続けます。以前にも海外に住んでいる日本人が選挙で投票するときの話を書いたことがあるので、よろしければこちらもご参照ください。

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