中野吉之伴フッスバルラボ

【きちルポ】長谷部誠のドイツでのキャリアを振り返る④40歳までプレーし続けられるほどのフィジカル能力と相手を驚愕させるインテリジェンス

▼  終幕へ

どんな物語にもどこかで必ず終わりがくる。

だがどこまで予兆されるものなのか。どこまで既定路線の終幕劇なのかはそれぞれ全く違う。35歳ころから毎年のように今年が最後だろうと言われながら、長谷部誠は軽快にピッチに残り続けた。

39歳となった22-23シーズンはこれまでより出場数は減ったものの、それでもチームに不可欠な選手であり続けた。後期は17試合中14試合に出場し、チームの7位フィニッシュに貢献。

「最後にもう一度チャンピオンズリーグ(CL)に出るのが夢」と語っていた通りにCLの舞台へと立ち、そして世界屈指のCFハリー・ケインを完封して見せたのだから驚きだ。

サッカーはインテリジェンススポーツ。プレー判断を明確にするという工程がクリアになることは、選手のパフォーマンスを引き上げるうえで極めて重要

もちろん指示を出すだけで戦力として厳しさがあるとメリットにはなり切らない。その点長谷部の動きは年を重ねても優れている。シンプルにフィジカル能力が高い。ボールをワンタッチで運ぶ距離とボールに追いつくまでの歩幅が非常に明瞭でなめらかだ。ステップを踏みかえて歩幅を調整したりするしぐさがほとんどない。

そして長谷部の存在が、両脇を固める若いCBコンビのトゥータとンディカのプレーを安定させていた。二人は4バックの時はやらなければならないことにふりまわされていた。だが長谷部がいることで、自分の役割がより明確になり、持ち味を見事なまでに発揮するのだから面白い

その落ち着きぶりには誰もが驚くが、本人は当たり前のことのように語る。

「僕のところは一番後ろでプレッシャーがそんなにかからないところでもあるんですけど、そういうところでビビらないというか、自信をもってやれる。若いチームで自分がビビらずやるというのはほかの選手に影響あると思う。相手がトッテナムだろうが、どこだろうが、そういう部分で匹目を取ることはない。周りの選手をうまくフォローしながら、もう少し周りをよくできたらと思いましたね」

《夢》と語っていたCLの舞台に俣ったことに関しても冷静なコメントを残す。

「いざプレーしてみると、サッカーの試合なのでそんなに変わらないかな。昨シーズンもヨーロッパリーグでいろんな国のチームと対戦しているので、思ったよりは普通な感じでやってます」

本当にそう思っているのか。でも手ごたえがあった時ほど長谷部はそんな風に語る。表向きには落ち着いて、心の中では熱い血潮がほとばしっている選手なのだから。

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