金井拓也「みんながサッカーに関われてて、指導者からも見られているって思ってたら絶対嫌にはならない」
▼中野「本当だね。解放されたプレーしてるときって、本当にいいサッカーするよね。レベル関係なくさ」
金井 「たかがじゃないですけど、でもたかがサッカーじゃないですか。それで嫌な思いになるってどうなんだろう。僕も中学のときがそうだったから。言ったかもしれないですけど、当時アビスパにいて、でも体は小っちゃくて、フィジカルもそんなに。その年代ってすごい顕著に差が出るじゃないですか。フィジカルがすごい強かったり、足がすごく速かったりする選手が出てくると、もう全然どうしようもなかったんですよ。
もちろん自分で考えて、ができたらいいんですけど、なかなかやっぱりそういうのは、その年代では考えられなかったんですよ。で、コーチがアドバイスくれたり、だったらいいんですけど、全然アドバイスもくれなくて、『お前うまくないんだし、速くないんだからがんばれよ』みたいなことしか言われなくて。それがどうがんばっていいかわかんないから困ってるのに。練習めっちゃつらくて。練習、学校から帰ってきて、2~3時間くらい、家で休憩できる時間があるんですけど、もうその時間が苦痛で苦痛でたまらなくて。
結局、最後、3年の最後の大会が終わる前にやめちゃって。そういう人たちは僕の年代で他にも何人かいました。僕は本当にサッカーそのものが好きでまた続けることが、今もこうやって関われてることができているけど、その人たちはサッカーから離れて行きました。好きでやっていることが嫌いになって離れていくなんて…って。
もちろん、プロを目指すことも大事かもしれないですけど、みんながまず本当にサッカー楽しいと思えるんだったら。試合に出られなかったら不満は出る。でも、それはまた別じゃないですか。みんながしっかりサッカーに関われてて、指導者ともコミュニケーション取れてて、指導者からも見られているって思ってたら、絶対嫌にはならない。例えば、指導者から一声かけられるだけでも全然違うじゃないですか。僕はU-18のときサガン鳥栖だったんですよ。試合に出られないときにもコーチが一声かけてくれました。最近どう、とかこの前の試合どうやった、とか。
それがすごい僕は嬉しかったんです。他の人からしたらそんなの全然大したことないっていうかもしれないけど、僕はそれを、なんだかすごく大事だなというふうに受け止めたんです。だから、今指導者として選手にそういう思いをさせたくない。だから、一人一人のその心だったり、細かくちゃんと見ないといけないし、例えばストレッチをしているときにふと悲しい顔を見せるときだってある。見せたらやっぱり一声かけないと。見逃しちゃいけないですし」
中野「試合の後とか、興奮しているときって、声かけても『うるせー』って思うときってあるじゃない。でも、そこで一声でもかけておくか、おかないかって、後に響いてきたりするんだよね。『うるせー』って言っていても、『そういえばあのとき一言、監督声かけてたなー』とか。そしたら次に話すときに『あのときはごめん』から始められるし。『ああ、別にいいよ』ってところから話せるし。そこで全部解決する必要はないけれど、でも声をかけるとか手を出すとか。そういうのって大事だなあって思う。
この前も試合中にスタメン外された選手がベンチですごくへこんでた。で、試合前に控室でこう手を出してタッチするんだけど、みんな不満抱えながらも一応こうパンて手を出すのよ。そのときはその選手は多分マックスだったらしくて、手を出さなかったの。ずーっと、俺、待ってたの、何にも言わないで。そしたら『もうどっか行ってくれよ。どうせ俺、いくら頑張ったって試合なんか出してもらえないんだし』って、わーって言い出して。隣の選手はさすがにちょっとやばいと思ったらしくて、ちょっとタッチぐらいしろよみたいに言ってるけど、嫌だ、嫌だって、ごねだして。
でも、もう我慢比べみたいになってきたから、オレはずっとこうやって待ってたの。で、俺は「これは一つのお互いの約束こと。不満があるのはわかるけど、まず試合」って。5分くらい結構わめいてたんだけど、そのあとちょっと落ち着いて。その試合はすごい勝ってたから、ハーフタイムから彼を出した。本当はそれこそ前半から替えて、出そうみたいな話はアシスタントコーチとしてたの。でも、その一幕があったから、一応後半頭から、ただしハーフタイムの間にアシスタントコーチがその選手と話をして、どういった事情かは把握した上で、『謝罪をするっていうことを納得したら』っていう条件付きにしたの。
そのときは、ハーフタイムに控室にも行かなかった。アシスタントコーチに任せた。試合が始まって、勝って、終わったあとに彼は俺のところにもきて気まずい感じでだけど一回タッチして、去って、それからまたもう一度戻ってきて、『さっきはごめん』って謝ってくれた。正直言えば、俺もちょっとはまだ腹立ってたけどね(笑)。『お前、もうちょっと謝り方もっとあるだろう』っとも思ったけど」
でも、性格も知ってるし、正直試合になかなか出られてなかったっていう不満もわかってるから、そのときはそれでOKにして。次の練習のときにあらためてしゃべって、ってことにした。そこの線引きが難しいんだよね。ベンチの場合だと、みんなが見てる前でやってるから、やってはいけないことだし、本当は罰とかがあったほうがいいんだと思う。それは僕の甘えや弱さというところかもしれない。でも、気持ちはわかるっていうところもあるし、他の選手もそう思ってるっていうのもあった。だから、それはそれとして、でもクラブチームの中の約束事として、今後はこういうときはこうしようっていうのを、もう一回ちゃんと話し合いするためのきっかけにしようと思った。
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