KAGOSHIMA SOCCER MAGAZINE“カゴサカ☆”

【大拍手に包まれ復帰した牛之濵拓。大けがで苦しんだ1年を経て、今思うこと】

【大拍手に包まれ復帰した牛之濵拓。大けがで苦しんだ1年を経て、今思うこと】

2021年5月9日、鹿児島県サッカー選手権大会決勝―。

無尽蔵のスタミナとアグレッシブな攻撃スタイルでチームをけん引してきた牛之濵拓選手が、右膝前十字靭帯損傷、全治約8ヵ月の大けがを負った。長く、もがき苦しんだ1年間の想いと、復帰の瞬間、今後の抱負を聞いた。

1年ぶりの白波のピッチ

 

1―0のリードで迎えた後半26分。「11→8」と表示された選手交代ボードの文字に、「待ってました!おかえりなさい!」と言わんばかりに白波スタジアムが沸いた。「リハビリを頑張って、ここに戻ってこられてよかったなと思いました」

 

さらに、牛之濵選手と交代したのは、2018年に同じけがを経験した五領淳樹選手。いろいろな想いが溢れたはず。五領選手は牛之濵選手の背中を3回叩くと、笑顔でピッチに送り出した。「言葉は聞こえなかったんですけど、伝わるものがありました。たくさん話を聞いて、アドバイスをもらっていて、代わった人が淳樹さんで安心して冷静に試合に入れましたね」

気付かされたサッカーという存在の大きさ

 

けがをした瞬間、頭が真っ白になったという。「サッカーをしていない時期が、こんなに長い時間はありませんでした。サッカーがなくなると、自分が変わってしまったようで…」。言葉を詰まらせながらも、手術後の入院期間中の出来事を振り返った。「アレルギーのような蕁麻疹が出たり、食事が喉を通らなくて、逆流性食道炎のような症状が出たりして、きつかったですね」

 

真面目でどんな時も真摯にサッカーに向き合ってきた牛之濵選手だからこそ、耐え難い1年だったのかもしれない。自身が思っていたよりもはるかに「サッカーが好きで、自分にはサッカーしかないんだな、と改めて感じられただけでも意義のある1年間でした」と前向きに捉える姿からは、強さが感じられた。

離れて感じた「チーム鹿児島」

「スタジアムの拍手で感じられた愛を、クラブに貢献したいという気持ちがどんどん強くなっています」

 

牛之濵選手がけがに苦しんだ1年間は、チームにとっても、サポーターにとっても苦しい1年間だった。ピッチで貢献できないもどかしさと悔しさを感じながら、常に自分にできることを考えてリハビリを乗り越えた牛之濵選手。「少しでもレベルアップして戻ることが、自分にできる唯一の恩返し。復帰がゴールではなく、ここからより自分に厳しく、もっといい選手になって、まだまだ強くなりたいですね。欲が出てきました」とストイックさは変わらない。

再出発

レンタル期間を含め、5年目を迎えた今季。5戦負けなしと好調のチームに、背番号8の復帰がさらなる拍車をかけるだろう。「全員が同じ方向を見ている」今、大切なことは「目の前の一試合一試合に集中すること。アグレッシブさを全面に出して、いい影響を与えられるようにします」と力強く宣言した。

 

次戦は16日(土)、ホームに2019-20シーズンの鹿児島を率いた金鍾成(キン・ジョンソン)監督が指揮をとる鳥取を迎える。「個人的にはジョンソンさんに成長した姿を見せたいですね。でも、相手がどこであれやることは同じです。試合に出られるように頑張ります!」

サッカー、仲間、クラブ、そしてサポーターの大切さ、存在の大きさを改めて感じ、身を焦がす思いで過ごした1年を経て、強くなった“新生・牛之濵拓”の勇姿をしっかり見届けたい。

 

(取材・文 平田美優)

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