【トピックス】選手権初出場の創成館高校がGK専門スクールを開校中。「長崎のGK界を変えたい(田中駿也GKコーチ)」
ゴールキーパーの大久保択生選手(現清水エスパルス)がこう言っていたことがある。
「キャッチの練習でのシュート一つでも、GKコーチと普通のコーチのシュートは違うんですよ。他のコーチが蹴るシュートは余り練習にならないんですよ。それくらい、GKは他と違うポジションなんです」
GKのシュートと他のシュートは何が違うのか?
そこについて創成館高校の田中駿也GKコーチはこう語る。
「普通のシュートはゴールを決めるためのシュート。でもGKコーチがトレーニングで打つシュートは、練習のためのシュート。その選手の苦手な部分や、試合での大事な部分を考えたGKコーチだからこそわかるシュートなんですよ」

創成館GKスクールを開校した、田中駿也創成館高校サッカー部GKコーチ
なるほど、それなら確かにGK経験者以外ではわからない感覚だろう。そんな、他のポジションではわからない感覚を指導するため、田中GKコーチは、高校主催としては県内初となるゴールキーパー専門スクール『創成館GKスクール』を開校している。
GKスクールを立ち上げた田中GKコーチは、小学校の頃からGKとしてプレーし、海星高校サッカー部で県高総体を優勝。インターハイにも出場した経験を持つが、そんな田中GKコーチ自身も長く専門コーチの指導を受けてこなかったという。
「最近でこそ、一部の高校にはGKコーチがいるようになりましたが、中学校でGKコーチを置いている学校は県内ではほとんどないですね。僕自身、現役の頃は、ずっとGkコーチがいなかったので、自分のやり方が間違っているのかどうかもわからない中で、試行錯誤しながらトレーニングをやらなければなりませんでした」
その経験と、GKコーチの指導を受けたときの「(指導を受ける前と後では)全然違う」という衝撃が、GKコーチライセンスの取得と、スクールの立ち上げにつながったという。
取材当日、創成館高校のグラウンドで行われたGKスクールには、20名弱の中学生年代のGKが集まっていた。高校主催のGKスクールということで、高校のグラウンドや備品が使用できる上に、スタッフの人数も多めだ。トレーニングの様子を撮影し、フィードバックができる体制も整っている。
指導は理論や目的など説明してからの実践が基本だそうで、なぜ、このトレーニングが必要なのか、どういう状況を想定しているのかを話してから実践されている。スタッフが豊富なため、学年や人数に応じてグループ分けがされているようだ。
スクールは当面、中学1年生から中学3年生を対象で、「まずは1回、専門の指導を経験してほしい」という思いから、初回の参加は無料だという。「専門的な指導を受けるのは早ければ早いほど良い」という田中GKコーチは、スクール事業を通じて長崎のGKの地位とレベルを高めたいと思っているそうだ。
「専門の指導を一番成長できる時期に受けられるかどうかで、その後のサッカー人生が大きく変わります。まだ専門的な指導を受けたことのない人も、すでにGKコーチの指導を受けているという人も別の目線を知るという意味で参加してもらっても良いと思います。長崎のGKのレベルを大きく引き上げていきたい」
こういった動きが、JやJFAの主導ではない形で県下全域に広がれば、長崎のGK界は確かに変わっていくかもしれない。そう思わせる取り組みが少しずつ、動き始めている。
reported by 藤原裕久