なぜ日本人選手は欧州で意外と評価が低いのか 木村正明(ファジアーノ岡山オーナー)<2/3>
■日本人選手は「コンテクストが違う」という真意
──Jリーグの専務理事を退任されてから、木村さんは東京大学の先端科学技術研究センターで特任教授をされています。おそらく、さまざまなオファーがあったと思いますが、その中で東大を選んだ理由は何だったのでしょうか?
木村 自分でいうのも口幅ったいですが、僕の去就については岡山のファン・サポーター、そして県民の皆様が見ているわけです。東大で新たに立ち上がった研究室で、クラブの価値やスタジアムについて研究するということは、いずれそこで得た知見を地元に還元できます。その意味では、皆様にも納得していただける、というのが背景にありました。
──私はてっきり、木村さんが学生に講義していると思っていたのですが、実際は研究がメインなのだそうですね。
木村 そうなんです。今は週の半分は岡山に帰っているのですが、なるべく自由に動けるように、そこは条件として認めていただいています。大学には毎週金曜、たまに月曜にも行って、研究室の連中と毎週ガッツリ論文を読み込んだり、議論したりしています。
──これまでご自身が、岡山やJリーグで取り組んでいたことについて、答え合わせをしている感じでしょうか?
木村 おっしゃるとおりです。クラブ代表時代もJリーグの専務理事時代も、眼の前の仕事に一生懸命でしたから、論文を読み込むことができる今は非常に充実しています。とりわけ欧米は160年のプロスポーツの歴史がありますから、文献も膨大にあるわけですよ。そうした歴史を掘り起こしていくと、これからの日本サッカーはどうあるべきか、Jクラブは何を目指すべきか、自ずと見えてくると感じています。
──現時点で、どんな未来を木村さんは見据えているのでしょうか?
木村 いくつかポイントがあります。まず世界という観点でいうと、プロスポーツクラブの価値の成長率が、実体経済の成長率の2倍以上に膨れ上がっています。ネット全盛の今、スポーツは嘘がなく筋書きのないドラマですしね。
人々の熱狂度合いが増していて、それを生み出すプロスポーツクラブを買い取りたい大富豪が列をなしている状態。それこそ中東の大富豪が、MLBの球団を買い取ろうとしているくらいですから。そんな中、日本サッカー界が考えなければならないのが、選手の移籍金です。
──今以上に選手の輸出国になっていく、ということでしょうか?
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