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J2とJ3「20番目のクラブ」社長による夢の対談 左伴繁雄(富山)✕山本志穂美(高知)<1/3>

 今週は「新春特別企画」として、カターレ富山の左伴繁雄さんと高知ユナイテッドSCの山本志穂美さんによる、クラブ社長対談をお届けすることとしたい。

 おふたりは、今回の対談が初対面。1955年生まれでクラブ社長歴が四半世紀の左伴さん、そして1965年生まれでクラブ社長となってやっと1年の山本さん。キャリアは対照的ながら、昨シーズンにギリギリで昇格を果たしたという共通点がある。

 J2昇格プレーオフ決勝の試合終了後、左伴さんは富山のゴール裏で昇格を報告後「現状でウチはJ220番目のクラブです」と語っている。同日に行われた入れ替え戦セカンドレグに勝利し、見事Jリーグ入会を果たした高知は「J320番目のクラブ」と言えるだろう。

 夢にまで見た昇格を果たしたものの、多幸感に浸ることができるのはせいぜい翌日まで。カテゴリーが上がれば、それに見合った予算組みや編成が求められるが、ライバルたちに比べてスタートが遅れている。加えて、勝てる試合も前年と比べて減少する可能性が高い。クラブ社長にとっての昇格は、喜びよりも重圧のほうがはるかに大きいと言えよう。

 J2J3、それぞれ「20番目のクラブ」の社長は、昇格という最大のミッションを果たした今、どんな思いを抱きながら新しいシーズンを臨もうとしているのか。おふたりの対談から探っていくことにしたい。(20241225日、オンラインにて収録)

昇格を果たして街の風景は変わったか?

──今日はよろしくお願いします。おふたりは初対面ということで、本題に入る前にお互いの印象について伺いたいと思います。まずは山本さんから。

山本 左伴さんはサッカー界で、これまでさまざまなクラブを優勝や昇格に導いて、多くの人材を育ててきた方だと認識しています。いつかはお目にかかり、お話を伺いたいと思っていたんですが、こんなに早く実現するとは思っていませんでした。この出会いに感謝しております。

左伴 実は富山は毎年、高知で合宿をやっていて、ユナイテッドさんとはよくトレーニングマッチをさせていただいているんですよね。けっこう歯ごたえのある対戦相手だったイメージがあります。その社長に寮母さんが就任したと聞いて、最初は頭にはてなマークが並びましたね(笑)。

 でも実際には外車の輸入販売が本業で、クラブの株も買っている経営者だと知ったんですが、まだまだ知りたいことはあるという感じです。それにしても寮母さんということで、もう少し僕と近い年齢をイメージしていたんですが、思っていたよりぜんぜんお若いですね。

山本 いえいえ、とんでもないです。今日はいろいろと勉強させていただきます!

──ということで、さっそく最初のテーマにいきたいと思います。富山も高知も、最後の最後でカテゴリーを上げたということで、今季はJ2J3の「20番目のクラブ」ということになります。経営でもフットボールでも、かなりの苦労が求められると思うのですが、まずは「昇格して何が変わったか」について伺いたいと思います。山本さん、いかがでしょうか?

山本 高知に関しては、本当に空気がガラリと変わってびっくりしましたね。私が社長になってから、地道に少しずつ地域の皆さんの心に火を点ける活動を続けていたんです。最初は静かだったんですが、だんだんJリーグへの道筋が見えてくると、メディアでの扱いも変わって露出が一気に増えたんですよ。

左伴 試合がない日でも、街なかで声をかけられるでしょ?

山本 そうですね。「応援しています!」って、たくさんの方からお声がけいただきました。あと、優勝が決まってからは「友だち」という人がたくさん増えました(笑)。

──アウェイの入れ替え戦に勝利して、高知に戻ってきた時には大歓迎だったのでは?

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