「自分がお世話になったサッカー界に還元できたら」 飯尾篤史が語る「ライター引退宣言」の真相<3/3>
■サッカー業界を離れて痛感する「日本は野球の国」
──五輪代表の予選って、私はぜんぜん行けていないんですけれど、最近はアウェイの現場に来ているのって、フリーランスだけみたいですね。
飯尾 そうなんですよ。僕とか川端(暁彦)さんとか浅田(真樹)さんとか。アウェイだと、新聞社も専門誌もまず来ないですよね。それだけ取材しているのに、パリ五輪本番ではフリーランスのライターには2枚しかパスが出ません。
──アテネ五輪予選の頃は、新聞各紙がアウェイにも来ていましたが、今はどこも台所事情が厳しいんでしょうね。そういえば先日、夕刊フジの廃刊が発表されました。紙だけでなく、公式サイトのzakzakもなくなるそうです。
飯尾 寂しい話です。専門誌にしても、ダイジェストは月刊誌、マガジンは隔月刊誌になってネットがメインだし、エルゴラも紙がなくなりましたからね。僕は専門誌の最後のいい時代を過ごすことができましたけど、フリーになってからは業界の厳しさを感じながらの12年間でした。
──今の飯尾さんから、サッカー業界はどう見えますか?
飯尾 難しい質問ですね。辞める前は、サッカーのニュースにどっぷり浸かっていましたし、情報もどんどんアップデートしていましたけれど、辞めてからはサッカーの情報が入ってこなくなりました。シャットアウトしているわけじゃなくて、野球に比べてサッカーの情報が本当に入ってこないんですよ。
──これだけ日本代表が結果を出して、ヨーロッパで三笘薫や久保建英が活躍していても、スポーツニュースは大谷翔平ばかりですからね。
飯尾 サッカーの世界にいた時は、何なら「サッカー人気の方が上なんじゃないか」みたいな錯覚があったんです。それが外側に出てみると、やっぱり日本は「野球の国」なんですよね。それはメディアにも言えることで、Number Webは野球もサッカーも扱うけれど、野球のほうが断然読まれているそうです。それは他の媒体でも同様でしょうね。
──埼スタや味スタに行けば、すごくお客さんが入って盛り上がっているし、代表戦は今でもチケットは完売していますけれど、それらは極めて限定的な「村の中の話」でしかないんですよね。海外で活躍するスター選手はいるんだけど、メディアでの扱いはオオタニサンの比ではない。
飯尾 三笘や建英は「名前なら知っている」くらいの感じなんでしょうね。ヨーロッパで主力として活躍する選手はたくさんいるけれど、かつてのカズさんとか中田英寿さんとか中村俊輔さんみたいな知名度や影響力はないから、サッカーの外側にいる人たちには届いていないのが実情だと思います。
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