未曾有の経営危機を乗り越えた先に拓かれた「J3」への道筋 高知ユナイテッドSCの知られざる「細うで繁盛記」<2/2>
■債務超過は1億3000万円! 水面下で深刻化していた経営危機
ところで、山本志穂美が高知ユナイテッドSCの社長に就任したのは、いつだったのだろう? 本稿を執筆する際、その日付を確認するべく、クラブ公式HPに当たってみた。驚くべきことに、記載はまったくなし。ネットを検索しても出てこない。ようやく高知新聞の2024年4月26日の朝刊で《高知U社長に山本氏 Jリーグ昇格「一丸で」》という記事を見つけた。以下、引用。
サッカーJFLの高知ユナイテッドSCの新社長に25日、山本志穂美取締役(59)が就任した。武政重和前社長(49)の辞任に伴い、高知市内の事務所で開かれた取締役会で選出。寮母兼オーナーの山本社長は「短い選手生命を高知に懸けてくれた歴代選手の思いも胸に、チームとサポーター一丸で高知にJクラブをつくりたい」と悲願のJリーグ昇格へ抱負を述べた。
4月25日というと、JFLはすでに第6節を消化している。つまり山本が(事実上の経営トップだったとはいえ)正式に社長就任していない時点で、開幕から勝ちっ放しの状況が続いていたことになる。新社長に関するリリースが、公式HPに掲載されていないというのは、本来あり得ない話。裏を返せば、それくらい余裕のない状況が続いていた、ということなのだろう。
「ウチの会社は、南国高知時代からスポンサーをしていたんですが、2016年からは株を増やして(オーナーの)宮地さんに次ぐ出資者として役員になったんですね。なぜ、そこまでやったのかというと『このままだとクラブが潰れてしまう』という危機感があったからでした」
そう語る山本。今回の取材で初めて知ったのだが、2024年1月の決算時、なんとクラブには1億3000万円の債務超過だったことが判明している。山本によれば、2023年度は「アウェイの交通費とか、春野の練習場のレンタル代とか、グッズや飲食の仕入れ代とか。それらに加えて、源泉徴収税、社会保険料、ガソリン代、家賃、いろんなものが未払い」──。その総額、およそ8000万円だったという。
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