宇都宮徹壱ウェブマガジン

メダル至上主義とコタツ記事の帰結としての誹謗中傷 パリ五輪報道で可視化されたスポーツメディアの現状

 今週は間もなく閉幕するパリ五輪について、備忘録的に書き記すことにしたい。3年前の東京五輪は、純粋にスポーツを楽しめない要因があまりにも多く、男女サッカー以外はほとんどTV観戦することはなかった。それに比べて今回のパリ五輪は、ほどよい距離感もあったためか、サッカー以外の競技(スケートボードや卓球など)を楽しんで視聴することができた。

 Facebookを見ると、取材者以外でも観戦や応援や視察といった目的で、パリに向かった友人や知人は少なくない。少し羨ましく思う反面、五輪というスポーツイベントには、もともと強い思い入れがない私のこと。花の都を再訪したい思いも、ないわけではなかったが、それが五輪である必然性は感じられなかった。

 そんなわけで、今回のパリ五輪もTV桟敷を決め込んでいたが、現地の空気を体感できる機会が一度だけあった。84日に羽田空港で行われた、サッカー男子の帰国取材である。大岩剛監督、そしてJリーグに所属する14選手が、囲み取材に応じるとの知らせが届いたのは、前日の午後。取材申請の締め切りが24時で、可否の知らせは当日の8時という慌ただしさであった。

 当WMをお読みの方はご承知だと思うが、私は今回のU-23日本代表については、一度たりとも現場取材をしてこなかった。にもかかわらず、なぜ帰国取材に参加したのかと問われれば、パリ五輪での彼らの戦いがとても魅力的に感じられたからだ。

 グループステージ初戦では、南米1位のパラグアイに5-0で圧倒。続くマリ戦とイスラエル戦では、いずれも1-0の僅差で競り勝って1位通過を果たした。そして迎えた準々決勝のスペイン戦は、それまで無失点だった守備力をこじ開けられ、0-3で敗戦。細谷真大の「幻のゴール」もあったが、点差ほど実力差を感じさせない戦いぶりに「あと2試合、このチームを見たかった」と思ったのは、私だけではなかったはずだ。

 幸い申請は通ったのだが、少しばかり落胆することもあった。実は今回の取材に関して、とあるネットメディアに「写真とコメントが必要なら送りますよ」と打診。売り込みというよりも「急な話だったので、もしよかったら」という気持ちからだった。回答は「けっこうです」ときっぱり。理由は「メダルを獲ったわけでもないので」というものであった。

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