宇都宮徹壱ウェブマガジン

「チーム自体はいい方向に向かっている」といえる理由 3代目社長、小澤修一が重視する「山雅らしさ」<1/3>

 84日、元日本代表の田中隼磨氏が、自身がアンバサダーを務めていた松本山雅FC、そして当時社長だった神田文之氏を提訴する旨、SNSで明らかにした。

 そんなざわついた空気の中、今週は株式会社松本山雅の3代目社長、小澤修一さんのインタビューをお届けする。田中氏については、金沢でのチャリティマッチ前日に話す機会があったので、今回の提訴については正直なところ驚いてはいない。一方、今回の小澤社長へのインタビューは、迷走状態がつづいた山雅について、かすかな救いが感じられる内容となっている。

 これを読む、山雅のファン・サポーターにお願いがある。田中氏の提訴の件は、いったん脇に置いて、まずは小澤社長の言葉に耳を傾けてほしい。私自身は番記者ではないし、当WMはオウンドメディアではない。それゆえ今回のインタビューでは、かなり突っ込んだ質問もしている。それに対して、山雅の3代目社長はいずれも真摯に答えてくれた。

 田中氏の提訴によって今後、何が明らかになるのかについては、私自身も引き続き注目していく。しかしその前提として、松本山雅FCというクラブが今、どのような状況にあるのか──。それを知る手がかりだけは提示したい。そうした書き手の意図を汲み取りながら、お読みいただければ幸いである。(取材日:202475日=オンラインにて収録)

ソリさんが去ってからの「模索の5年間」

──先週のアルウィンでの信州ダービーは1-1のドローでした。松本山雅の社長に就任して、初めてのダービーだったわけですが、まずはその感想から教えてください。

小澤 J3というカテゴリーにもかかわらず、14411人の方々にご来場いただいて、久しぶりにアルウィンにたくさんの方が来場いただきました。試合結果に満足してはいけないんですけれど、観客がたくさんいることで得られる熱量があるんだなと感じた一日でした。とはいえJ1 時代は、平均で1万7000人が入っていたわけですから、まだまだこんなところで満足してはいけないというのが正直な感想です。

──以前は「ホームゲームはいつも満員」というイメージがあった山雅ですが、その後は集客に苦しむ時代もあったかと思います。先日のダービーで、今季J3最多を記録したことで、ある程度は自信を取り戻せたのではないでしょうか?

小澤 やっぱり信州ダービーは特別だなと思いました。実はGWでも1万人入った試合があったんですが、コロナ禍で遠ざかっていたお客さんも、少しずつ戻ってきている印象はあります。

──ご自身の社長就任が今年の4月ですので、まもなく3カ月になります。「社長!」と声をかけられることに慣れました?

小澤 まだぜんぜん(苦笑)。意識して外に出て、いろんな方々にご挨拶しているのですが、自分が背負ったものの重みが、少しずつじわじわと実感している感じです。

──どういうシチュエーションで、その重みを感じます?

小澤 一番感じるのは、試合のあとですね。喜んで帰る人、悔しさをにじませながら帰る人。そういった姿を見ていて、今すぐ自分だけで何かを変えるのは難しいかもしれないけれど、自分の仕事の延長線上に勝敗がつながっていることを強く実感します。

 あとは外回りしている時ですね。いろんな方とお話する中で、クラブに対する期待がある一方で、危機感のようなものを口にされることもあります。そういう言葉をいただくたびに、今すぐ何かアクションを起こさなければ、という感覚にもなりますね。

──危機感については、またあらためて伺うことにします。チームのほうですが、今季でJ33年目じゃないですか。1年目の2022年は「1年でJ2復帰」を目指して、結果は昇格圏内に1ポイント差の4位。続く2023年は大きく期待を裏切る9位で終了しました。クラブとしては、かなり見込み違いだったと思いますが。

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