宇都宮徹壱ウェブマガジン

久保建英の凱旋と同業者の「ライター引退宣言」 レアル・ソシエダ JAPAN TOUR 2024に寄せて

 今週の水曜日、都内で「レアル・ソシエダ JAPAN TOUR 2024(以下、ジャパンツアー)」が開催され、私も国立競技場まで取材に行ってきた。同じ日、旧知の同業者の「ライター引退宣言」を知り、少なからず衝撃を受けている。

 この2つの出来事には、直接的な関連性はないけれども、私の中では分かち難く結びついている。両者をつないでいるのは「サッカー業界の憂慮すべき現状」。どういうことなのか? 以下、解説を試みることにしたい。

 まずは、久保建英の凱旋試合となった、レアル・ソシエダのジャパンツアーについて。イベントの主体はソシエダであり、その対戦相手として選ばれたのが東京ヴェルディだった。ヴェルディは中3日で、北海道コンサドーレ札幌とのホームゲームを控えており、この試合では若手中心でスタメンを組んだ。

 ソシエダはスター軍団とは言い難く、まさに「久保建英と仲間たち」。かくいう私も、ソシエダでのTAKEを撮影できる貴重な機会ということで、国立に駆けつけた次第である。久保は48分にミケル・ゴティとの交代で退き、試合は2−0でソシエダが勝利している。

 ところでこの試合では、試合中のブラスバンドの演奏が「話題」となった。こちらの記事によれば《クラブのメインスポンサーを務める企業による仕切りであった》そうだ。

 同記事では、ヴェルディのサポーターによる先導応援がなくなったことも、ブラバン導入の理由として指摘している(ちなみにメインスポンサーによる観戦ルールについてによれば、鳴り物や大旗などによる応援の禁止事項はなかった)。

 地元サポーターの先導応援がないから、賑やかしにブラバンという発想に、当惑した観客は少なくなかったと思う。私もそのひとりだったが、それ以上に違和感を覚えたのが、試合中の大型スクリーンの表示。まず、時間表示がなかったこと。そして、選手名が英文表記のみだったことが気になった。

 今季のヴェルディには「YAMADA」が3人(山田楓喜=ベンチ外、山田剛綺、山田裕翔)、「KAWAMURA」も3人(河村匠、河村慶人、川村楽人)所属している。スクリーンに「G YAMADA」とか「T KAWAMURA」と表示されても、ライト層には誰が誰だかわからない。国立という晴れ舞台でのこの扱いは、何とも気の毒に思えてならなかった。

 加えていえば、この日の公式入場者数は4150人。国立のキャパシティが67750人だったことを考えると、いささか寂しい数字である。今回のツアーは主催者側にとって、どれだけ満足できる内容と結果だったのだろうか。

 個人的には、モヤモヤ感の拭えないイベントだったと言わざるを得ない。サッカー的ではないブラバンでの賑やかしに加え、大多数の観客が日本人なのに選手表記は英文表記のみ。「いったい誰に向けてのイベントだったのだろうか」という疑問は、試合後も私の中でくすぶり続けた。

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