【無料公開】映像があふれる時代だからこそ「皆が楽しめる場」を ヨコハマ・フットボール映画祭2023レビュー<1/3>
今週は、毎年好例のヨコハマ・フットボール映画祭(以下、YFFF)のプレビュー企画。2023年は6月17日(土)と18日(日)に横浜市のかなっくホールで、19日(月)から23日(金)までシネマ・ジャック&ベティで開催される。作品とイベントについて解説いただくのは、YFFF実行委員長の福島成人さん(写真右)、そしてエキスポ担当の澤野雅之さんである。
古くからの会員の方はご存じのとおり、当WMは前身のメルマガ時代から、YFFFの第1回のプレビューやレビューの記事を毎回掲載してきた。今回はイベントでの出番はなく、出張版「徹壱堂」での出店もないが(理由は後述)、その分は上映作品とサッカー仲間との語らいを楽しみたい。さっそく今回のラインナップについて、おふたりにご紹介いただくことにしよう。(取材日:2023年5月23日@東京)
アメリカ女子代表がイコールペイ実現のために米サッカー連盟を訴えた!『LFG –モノ言うチャンピオンたち–』©Change Content
■前回の女子ワールドカップ決勝で叫ばれ得た「イコールペイ」
──福島さん、澤野さん、今日はよろしくお願いします。6月17日と18日に横浜のかなっくホールで開催される、ヨコハマ・フットボール映画祭2023。通算13回目となる今回のビジュアルは女子アメリカ代表で、中央に描かれているのはミーガン・ラピノーですね?
福島 そうです。今年は女子ワールドカップが開催されることもあって、今回のYFFFでもアメリカ女子代表のドキュメンタリー作品『LFG-モノ言うチャンピオンたち–』を上映します。その作品で主役となっているのが、代表のキャプテンであるラピノー選手ですね。
──女子のワールドカップは、これまで8回開催されていますけれど、アメリカは優勝が4回、準優勝が1回、3位が3回。つまり3位以下になったことがないという、まさに最強軍団ですよね。ちなみに唯一、決勝で敗れた相手というのが、2011年のなでしこだったわけですが。
福島 そうでしたよね! 男子で最多優勝といえばブラジルの5回ですが、それでもここ20年は優勝できていません。それと比べると、女子のアメリカの突出した強さが理解できると思います。ところアメリカの場合、協会から支払われる男女の代表の報酬は「イコールペイ(同一賃金)」ではなかったんですよね。ワールドカップでの成績面はもちろん、協会への収益面でも女子のほうがはるかに上回っているにもかかわらず。
──そういえば前回(2019年)のワールドカップで、アメリカ代表の「イコールペイ」が盛んにニュースになっていましたよね。
福島 この作品上映のゲストである、WE Love女子サッカーマガジンの石井和裕さんが、この大会の決勝(アメリカvsオランダ)を現地で観戦しているんですが「USA!」コール以外に「イコールペイ!」コールもあったそうです。
──そこまで観客を巻き込んでいたんですか!
福島 観客だけでなく、この時の女子代表はアメリカ大統領選挙も巻き込んでいましたよね。民主党候補だったジョー・バイデンが女子代表を応援していたかと思えば、現職大統領だったドナルド・トランプがラピノーとSNSで舌戦を繰り広げているという。このドキュメンタリーは、2019年のワールドカップでのアメリカ代表を密着しているので、そういったエピソードも出てきます。
──これはもうサッカーとかスポーツというより「ジェンダー問題」そのものですよね。
福島 おそらくアメリカ代表の選手たちも、自分たちが社会に影響を与えていくロールモデルという意識があるんでしょうね。結果として彼女たちの要求が認められるわけですが、そこにはスポンサーからのプレッシャーもあったみたいです。つまり男女平等が受け入れられない協会でなければ、会社としても応援できないということで。
──なるほど。それにしても今年は「Jリーグ30周年」です。そっちのテーマで来るのかなと思っていたんですが、あえて女子ワールドカップに当ててきて、こうしたジェンダー問題を扱った作品をメインに持ってくるのは、さすがにYFFFだなと思いました。
福島 ありがとうございます。われわれとしても、ぜひ観ていただきたく、土曜日の良い時間帯(19時10分)に設定することにしました。
──ちなみに上映後のトークには、WEリーグの髙田春奈チェアもゲストとして登場するそうで、こちらも楽しみですね!
福島 そうですね。実はYFFFでは、初代チェアの岡島喜久子さんもお招きしているんですよ。高田さんはJリーグ理事時代、シャレン!も担当されていたので、初代とはまた違ったアプローチをされているように感じます。それともうひとりのゲストとして、日本のU−30世代の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」を設立した、能條桃子さんもお招きします。
──ゲストのチョイスも非常に絶妙だと思います。このおふたりに女子サカマガ主筆の石井さんが加わることで、どんなトークが展開されるのか非常に楽しみです!