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シーズン移行の議論で注目すべき3つの視点 10年前の2ステージ制導入と何が違うのか?

真冬の降雪地帯で「安心・安全・快適なスタジアム」は叶えられる?

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寒冷地クラブは邪魔ですか?

 5月28日、デンカビッグスワンスタジアムで行われたアルビレックス新潟vsガンバ大阪の試合で、ホームのサポーター席からシーズン移行に反対する横断幕が掲出された。それも1枚ではない、何枚もだ(こちらのツイートでは19枚確認できる)。

 このツイートを見た時、まず浮かんだのが「これだけのメッセージが、果たしてどれだけ報じられるだろうか?」という疑問だった。案の定、この件で私が確認できた記事はこちらこちらのみ。どちらも「コタツ」で書かれたと思われるが、それでもスルーしなかったことは評価できよう。

 一方、昨日(30日)行われた理事会後の会見で、シーズン移行のメリットとデメリットについて整理した資料が公開され、野々村芳和チェアマンが寒冷地のスポーツインフラ強化に意欲を示したことについては、各メディアが報じている。この差は何なのだろうか?

 今回のシーズン移行について考える時、私が思い出すのが10年前の「2ステージ制」に関する議論である。正確には「2ステージ+ポストシーズン制」。年間勝ち点最多クラブが優勝するのではなく、ファーストステージとセカンドステージの優勝クラブ、そして年間勝ち点2位・3位にも優勝のチャンスがあるシステムの導入をめぐって、当時の日本サッカー界は揺れていた。

 1シーズンの間に、いくつもの山場を作りやすく、それによってメディア露出や広告価値が高まる。その意味では、確かに2ステージ制はメリットがあるように思われた。けれども、それはあくまでもTV局や広告代理店の発想。リーグ戦の本質からかけ離れたレギュレーションの変更は、多くのサッカーファンの反発を招いた。

 ちょうど新しい書籍のために、当時の記録を読み漁っていた経験から、今回のシーズン移行に関して痛感したことがある。まず、ファン・サポーターを巻き込んだレギュレーション変更の議論が、実のところ10年前の2ステージ制導入以来のことであること。そしてもうひとつ、この10年における環境の変わり様にも驚かされる。ここでは、(1)Jリーグからの発信、(2)ファン・サポーターの受け止め、(3)メディアの立ち位置、という3つの視点から論じていくことにしたい。

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