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国立開催のこと、神楽しまねのこと、そしてシーズン移行のこと 加藤桂三理事長に訊く「四半世紀を迎えたJFLの今後」<3/3>

国立開催のこと、神楽しまねのこと、そしてシーズン移行のこと 加藤桂三理事長に訊く「四半世紀を迎えたJFLの今後」<2/3>

 

「しまねの悲劇」を繰り返さないために必要なこと

──話題を変えましょう。昨シーズンに奈良クラブとFC大阪が昇格したことで、Jリーグは定員の60クラブになり、いよいよ今季からJ3JFLの入れ替え戦が始まります。FC町田ゼルビアがJFLに降格したのが2013年ですから、実現したら10年ぶりということになりますが。

加藤 町田の時はJ2からJFLへの降格でしたからね。だから落ちた時のギャップはものすごかった。それに加えて当時のJリーグは、もっと仲間を増やしたいという思いもあったから、それでJ3ができたんですよね。

──ここでJFLができた背景を振り返る必要があるかと思います。かつて旧JFL(ジャパンフットボールリーグ)という、7シーズンだけ存在した2部相当のリーグがありました。ところが1999年にJ2ができて、残ったアマチュアチームを全国リーグではなく、地域リーグに戻そうとしたと時に「アマチュアの日本リーグを継続してほしい」と熱望したのが本田技研と大塚製薬。結果、プロアマ混交の全国リーグとして、同じ年に生まれたのが現在のJFLだったわけですよね。

加藤 Jリーグからしてみても、将来的に降格するクラブが出てきた時、落ちた先が全国でなく地域リーグだと厳しいですよね。全国リーグはもちろんお金がかかるんだけど、一定数の試合数が確保されているので、Jリーグに復帰するための場としてはありがたい存在だと思います。

──これまでの仕組みの中でいえば、Jリーグの下は全国リーグのほうが望ましかったというのは、確かにそのとおりだと思います。

加藤 それだけじゃなく、地域リーグからJリーグを目指すクラブが増えていった時に、JFLで全国リーグの経験を積んでからJ2J3に入会したクラブはたくさんありました。一方で、もともと企業チームとしてJFLで活動していたのが、プロ化してJに行ったケースもありましたよね。それこそ徳島ヴォルティスだったり、カターレ富山だったり。

──そうやって、J1J240クラブの定員に達したとき、「やっぱりもう少し仲間を増やそう」ということでJ3ができたわけですが、おそらくこの時がJFLの存在意義を再定義するチャンスだったと思うんです。それがないままにJFLが続いた結果、入場者数は軒並み減少しましたし、全国リーグを負担に感じるクラブも出てきたわけですよ。Honda FCやソニー仙台FCのような企業チームだったら、まだ何とかなっているんでしょうけれど。

加藤 確かに地方の市民クラブだと、ぎりぎりでやっているところもあるので否定はしません。先ほどのしまねのケースはかなり特殊だと思いますが、去年からは地域CLに出場する12チームに対しては決算書を出してもらって、経営的に問題がないかを精査するようにしています。ちなみに、今年上がった2クラブ(ブリオベッカ浦安と沖縄SV)は問題なかったですが。

──問題ありのクラブもあったと。

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