宇都宮徹壱ウェブマガジン

一夜限りの復活(?)錦糸町フットボール義勇軍 課題山積のJFLを「喝!性化」@KITEN!<3/3>

一夜限りの復活(?)錦糸町フットボール義勇軍 課題山積のJFLを「喝!性化」@KITEN!<2/3>

 

主催者側との調整が不可欠だった「ロック総統の乱入」

マー 今、元テゲバ監督の内藤(就行)さんの名前が出てきましたけれど、なぜ総統が鹿島のOBと親しいかというと、Jリーグが始まった頃はアントラーズを応援していたからなんですよね。最近は知らない人も増えてきているようですが。

総統 それこそ30年くらい昔の話ですが、カシマサッカースタジアムのトイレットペーパーが全部なくなってしまうという事件がありましてね(一同、笑)。

マー 犯人は明らかですよね。紙テープみたいにゴール裏から「せーの」で投げていたんでしょ?

総統 で、そのトイレットペーパーが溶けて、芝を腐らせちゃうという問題が発生してしまったんですね。それでトイレットペーパーの投げ入れは禁止されたんです。競技に悪影響を与えることは、さすがにやっちゃダメだけど、いつの頃からかユーモアもウィットもないゴール裏になってしまいましたよね。

宇都宮 総統の嘆きはわかるんですけど、それに抗うようなJクラブの動きもないわけではないと思っています。その筆頭が川崎フロンターレじゃないですか? 2017年のJ1最終節で逆転優勝した時、優勝シャーレは鹿島が遠征していたヤマハスタジアムにあったんです。それで風呂桶を選手たちが掲げたわけですけれど、最初は「Jリーグに怒られるんじゃないか」と心配する関係者もいたそうです。

マー スタッフさんも、最初は勇気が要ったんでしょうね。

宇都宮 だと思います。でも結果、風呂桶はたくさん売れるし、村井さんからも「素晴らしい!」と絶賛されるし、完全に流れが変わりましたね。それから川崎の時代が続くわけですが、ただ強かっただけでなくユーモアも持ち合わせていたというのが画期的でした。

総統 さっきから「JFLの価値」うんぬんの話が続いていますが、それならJリーグにはできないような「面白いことができるリーグ」という打ち出し方をすればいいと思うんですよね。

宇都宮 私が総統に初めて出会った、2013年のSC相模原vsホンダロックの「ええじゃないか!」運動なんか、まさにそうでしたよね。あんなカオスは、Jリーグでは絶対あり得ない(笑)。

参謀長 トイレットペーパーの投げ入れとか、今のファン・サポーターからすればドン引きだと思うんですが、Jリーグが始まったばかりの頃はそういったエピソードがたくさんあったんですよ。僕自身、スタジアムでのファンカルチャーを作り出す側にいたからわかるんですけど、そうしたエネルギーはこの10年くらい、感じられなくなりましたね。

マー 昔はオラオラ系のサポーターが普通にいて、それに対して「もっとユーモアがあってもいいんじゃない?」と言っていたのが総統だったんですよね。

参謀長 基本的にクラブ経営者が、ファンカルチャーを考えることはないんですよ。それでもJリーグが始まったばかりの頃は、そういったものを作り出そうとする人たちが普通にいて、周りからも容認されていたよね。

マー 逆に今は、わがままなサポーターは少数派になりましたよね。だからこそ、老若男女が楽しめるスタジアムになったという部分はあるんでしょうけど。

参謀長 その代わり今のJリーグって、面白さや刺激といったところにリーチしにくい産業になっていると思います。ここはけっこう大きなポイント。他のエンタメコンテンツやスポーツ産業はどうかといえば、今のJリーグと比べればもっと自由度があるし変化も速いですよね。

マー 僕はコメディアンという仕事をしていますが、サッカー選手はお客さんを喜ばせるスキルでお金をもらっているという意味では、芸人さんにかなり近い存在だと思っているんですよ。Jリーグだって「興行」という意味で考えるならば、もっとみんなで面白いことをしようという発想があってもいいんじゃないかと思うんですけど、難しいんですかね?

総統 ひと口で「面白いこと」といっても、何でも許されるわけではないし、主催者側との調整も必要です。「ロック総統の乱入」についても、あれは僕のわがままでやっているわけではなくて(笑)、実は主催者側との綿密な調整があるわけですよ。「これは怒られるかも」と思うんだったら、きちんとしたコミュニケーションは必要。

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