宇都宮徹壱ウェブマガジン

なぜマスコット総選挙は今年で終了となったのか? Jリーグの「中の人」が初めて語る内部事情<1/3>

 今週はかねてから予告していたとおり、今年で終了となったJリーグマスコット総選挙について「中の人」へのインタビュー取材をお届けする。取材に応じていただいたのは、事業本部マーケティング戦略スーパーバイザーの山下修作さん、そして事業マーケティング本部の中村有里さんである(山下さんはお仕事の都合により、冒頭のみの登場)。

 マスコット総選挙がスタートしたのは2013年。当時はJ1J2クラブのマスコットを中心に37体の参加であった。それが今回は56体が参加。最後の総選挙で見事優勝を果たしたのは、横浜F・マリノスのマリンであった。

 それにしても、なぜマスコット総選挙は、今年で終わってしまうのだろうか?

 確かにマスコットファンの間では「そろそろ終わるのではないか」という予感はあった。上位陣の固定化、ファンの総選挙疲れ、中小クラブの負担など、理由はいくらでも考えられた。とはいえ、第11回というタイミングでの終了発表は、かなり唐突に感じられたのも事実。終了の理由について、Jリーグからの正式なアナウンスはなかった。

 オフィシャルネーム&ナンバーの「自由化」でも感じたことだが、このところJリーグの「説明不足」が気になっていた。ここは取材者の出番である。幸い今回の取材オファーについても、きちんと対応していただけたので、当方の疑問についてはすべて回答していただいた。あらためて「中の人」のおふたりとJリーグ広報部に御礼を申し上げたい。(取材日:2023221日@東京)

マスコット大集合のきっかけを作ったのは「一平くん」?

──山下さん、中村さん、今日はよろしくお願いします。お時間が限られている、山下さんから先に伺いますが、マスコットを集めるきっかけとなったのは2011年。当時のFUJI XEROX SUPER CUPで、愛媛FC非公認マスコットの一平くんを呼んだのがきっかけだったんですよね?

山下 そうです。この年は日産スタジアムが会場だったんですが。ちょうど『J2白書』という書籍が出たタイミングだったので、そのプロモーションという名目で一平くんを東ゲート広場付近に放ったんです。そうすると、お客さんがたくさん集まってきて、皆さんがすごく楽しそうな笑顔を見せるわけですよ。その様子を望遠レンズで撮影して、試合終了後にパワポでプレゼン資料を作ったんです。

──それを当時のJリーグ上層部に向けて、マスコットの重要性を訴えたと。

山下 おっしゃるとおりです。一平くんを登場させたら、マスコット1体ですごくたくさんの笑顔が生まれたんです。「これをJ1クラブのすべてのマスコットを集めたら、18倍の笑顔が生まれることになるんです。この笑顔の総量を増やすことでFUJI XEROX SUPER CUPの価値を高めたいと思います!」みたいなことを訴えたように記憶しています。

──かくして、翌2012年のFUJI XEROX SUPER CUPで「J1マスコット大集合」が実現するわけですが、この時はまだ総選挙ではなかったんですよね?

山下 総選挙ではなく、神田明神でじゃんけん大会を行って、それでセンターポジションを決定したんです。ヒントとなったのが、AKB48シングル選抜じゃんけん大会だったんですが、この時は大宮アルディージャのミーヤが優勝したんですよね。当時は「大宮の初タイトル」として、一部では話題になっていました(苦笑)。

──そしていよいよ2013年から、第1Jリーグマスコット総選挙が始まります。中村さんは、いつから総選挙に関わるようになったのでしょうか?

中村 実は第1回からです。当時のJリーグメディアプロモーションのメンバーとして、実務的なところを担当させていただいています。

山下 僕は社内外の調整をしたり、各クラブに協力のお願いをしたり。実務のメイン担当は、ずっと中村でしたね。僕は当日、マスコットを整列させる、コンコースにマスコットをばらけさせて立ってもらう、あとは混んでいるところはマスコットの立ち位置を調整して、コンコース上で滞留が起きないようにする、といったことを担当していました。

 第3回くらいからは完全に中村がメインで、僕は当日のサポートだけという感じでしたね。集合写真で全マスコットがしっかり写真に映るように、フォトグラファーと連携して立ち位置を調整したり、足が遅いマスコットを台車に乗せて運んだり、ということをやっていました。今は完全に、それらの役割からも離れています。

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