宇都宮徹壱ウェブマガジン

真の意味での「Jリーグの価値」を考える kotobaでの連載開始と新しい書籍に寄せて

 今週も、本題に入る前に御礼から。

 今年に入ってから、同業者やサッカー仲間から相次いで献本いただいた。到着順から、西部謙司さんの『戦術リストランテVII: 「デジタル化」したサッカーの未来』(ソル・メディア)、五百蔵容さんの『森保ストラテジー サッカー最強国撃破への長き物語 (星海社新書)、ひぐらしひなつさんの『サッカー監督の決断と采配傷だらけの名将たち(エクスナレッジ)である。

 西部さんの『戦術リストランテ』は、footballistaでの連載をまとめたもので、これが7冊目。近年の戦術は、トレンドの移り変わりが激しい。それだけに、こうして定期的に書籍化することの意義は大きいと感じる。新刊を読んだあとに過去の書籍を読み返してみると、さらなる発見がありそう。サブタイトルの「デジタル化」については、先日WMで取り上げたトラッキング分析にも通じるテーマなので、ぜひとも勉強させていただこうと思う。

 五百蔵さんの『森保ストラテジー』は、昨年のワールドカップ・カタール大会での日本代表が、なぜドイツとスペインに勝利できたか(そしてコスタリカとクロアチアに勝てなかったのか)についての分析本。ワールドカップ期間中に書籍化の話が持ち上がり、わずか3カ月で完成させるというスピードにまず驚かされる。ご本人いわく「森保さんの分析は広島時代から書いていますから」。それでも、その筆力には圧倒されるばかりだ。

 ひぐらしさんの『サッカー監督の決断と采配』は、彼女の地道で丁寧なサッカー指導者への取材を形にしたもので、2019年の『救世主監督 片野坂知宏』(内外出版社)以来となる書籍。話題性が期待できるテーマではないものの、エクスナレッジの森哲也さんが上手くすくい上げてくれた。内容の確かさもさることながら、書き手の誠実な仕事をきちんと評価し、世に送り出してくれる編集者の重要性を感じさせる一冊だ。

 実は3冊とも、ななめ読みしかできていない。本来ならば完読して書評を書くべきなのだが、自分の書籍の執筆で忙殺されているので、なかなか時間が取れないのが実情。そんなわけで、御礼を兼ねて簡単に紹介させていただいた。興味がある方は、ぜひとも手にとっていただきたい。

 さて、本題。今月6日に発売されたkotobaという季刊誌にて連載が始まった。3回限定とはいえ、紙媒体での連載は本当に久しぶり。しかも、サッカー専門誌ではないこともまた、非常に重要である。B5判の228ページで1550円(税込み)。特集と連載の2部構成となっていて、最新号の特集は「カズオ・イシグロ」。バックナンバーを見てみると「マンガの現在」「やがて愉しき外国語」「『運』の研究」「ゴッドファザー」などなど、非常にバリエーション豊かだ。

 一方の連載陣も、錚々たる名前が並ぶ。私など末席でももったいないのに、今回は3番手のポジションで6ページをいただいた。だが、それ以上に私が誇らしく感じるのが、こうした文芸・文化の雑誌に「Jリーグ」というテーマで連載を持たせていただいたことだ。今年は「Jリーグ30周年」だが、単にプロスポーツ興行が30年続いたという話ではないことは、当WMの会員の皆さんには言わずもがなであろう。当連載の冒頭で私は、このように書いている。

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