宇都宮徹壱ウェブマガジン

2年連続DAZN値上げの向こう側に見えるもの 放映権ビジネスの歴史とJリーグの未来<2/2>

2年連続DAZN値上げの向こう側に見えるもの 放映権ビジネスの歴史とJリーグの未来<1/2>

<2/2>(目次)

*スカパー!時代が続いていたらどうなったか

*放映権ビジネスに代わる新たな「救世主」?

*もしも2016年にジャッジできる立場だったら

スカパー!時代が続いていたらどうなったか

──欧米各国の放映権事情について伺ったことで、それでは日本のJリーグはどこを目指すべきか、というテーマに移りたいと思います。まず2016年にDAZN、当時のパフォーム・グループと交渉するにあたり、Jリーグはどのようなことを重視していたのでしょうか?

小西 放映権料とは別に、まずは全試合をライブ中継で視聴者に届けることでしたね。なぜなら、それが普及と視聴習慣につながるからです。当然、そのためには膨大な制作費がかかるわけで、それをどうやって確保するかというのが喫緊の課題でした。

──スカパー!時代はJ1J2は全試合でしたが、J3は年間10試合程度、あとはハイライトが中心でしたよね。

小西 そうでした。J3の中継もきちんと届けるには、やはり投資が必要で、そのためにはスカパー!の放送権料を増やしてもらえるかが重要。残念ながら、こちらが期待した金額まで上がりそうにないことが明らかになった時、DAZNが浮上してくるわけです。

──もしDAZNからの売り込みがなかったら、スカパー!と新たに契約を結ぶことになっていたと思います。その場合、2017年以降のJリーグは、どうなっていたでしょう?

小西 Jリーグ自体、大きくスポンサー収入が落ちることはなかったと思うんです。それでも各クラブへの配分金は大きく減っていただろうし、J3までの全試合中継もできなかったでしょう。そうなると、たとえばJ2からJ3に降格したクラブのサポーターは、スカパー!で試合を見られなくなるわけですよね。クラブ側も露出が減れば当然、スポンサー営業がやりにくくなります。

──そうなった場合、たとえばクラブスタッフが試合を撮影して、それをYouTubeにアップするという手もありますよね。それこそJFLのように。

小西 方法としては、それしかないでしょうね。当然、カメラ台数も限られるし、プロが撮ったものではないから、とてもクオリティが低い映像になるでしょう。クラブの負担も増える。ただでさえ分配金が減る中、クラブとしては淡々粛々とやっていく以外になかったでしょうね。

──そういう意味では、間違いなくDAZNは「救世主」だったわけですけれど、一方で彼らは日本という市場を買い被っていた可能性が否定できないと思うんです。当初の視聴料金を低く設定したのも、彼らが想定していた視聴者数を高く見積もっていて、結果として「こんなはずじゃなかった」ので値上げにつながったように感じます。ここで気になるのが、彼らがどれくらいの視聴者数を見積もっていたかです。100万人くらいでしょうかね?

小西 もっと大きかったんじゃないでしょうか。僕の感覚でいうと、350万人くらいの加入者がいないと厳しいと思います。そのうちサッカーで期待していたのが、最低で150万人から200万人くらいですかね。

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