宇都宮徹壱ウェブマガジン

インファンティーノ会長は「史上最高」というけれど カタールでのワールドカップはどんな大会だったか?

 カタールで開催された第22回ワールドカップは、アルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じた。今大会について、さまざまな総括がなされる中、私もその議論の輪に加わってみようと思う。私の寄って立つところは、1998年のフランス大会から7大会連続で現地取材した経験。その観点から言えば、今大会は非常に面白かった反面、よくも悪くも「特殊な大会」だったと思う。

 FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、今大会を「歴代最高」と自画自賛している。果たして、2022年にカタールで開催されたワールドカップは、どのような大会だったのだろうか? 私は以下のように評価している。

1)クラブワールドカップのような大会だった

2)南米の復権が20年ぶりに達成された大会だった

3)アジアの人々に「プライド」を与える大会だった

4)金持ちに優しく貧乏人には辛い大会だった

5)試合以外は刺激の少ない大会だった

6)「カネさえあれば開催できる」ことが証明された大会だった

7)「32カ国出場」の完ぺきさが再確認された大会だった

 それぞれ解説していこう。

1)クラブワールドカップのような大会だった

 カタールで取材中、ずっと思っていたのが「今大会って、クラブワールドップみたいだな」というものであった。私は2009年にUAEで開催された、クラブワールドカップを取材しているのだが、あの時の雰囲気に非常に似ていると強く感じていた。

 まず、中東での開催ゆえに、冬に開催されたこと(この時は12月9日から19日まで)。欧州のファンは少なめだった代わりに、中南米のファンはそれなりに多かったこと。そして決勝のカードが欧州vs南米で、アフリカとアジアのクラブも存在感を示したこと(これに関しては大陸王者が集まる大会だから当然と言えるが)。

 だが一番の類似点は、開催国枠の出場チーム(この時はアル・アハリ)が初戦で敗退しても、大会そのものが盛り上がっていたことだ。これは今大会、カタール代表がGS(グループステージ)3戦全敗となっても、大会の盛り上がりにネガティブな影響を与えなかったことと、非常に似通っているように感じられた。

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