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ドイツ&クロアチアから日本はどう見えたか? 中野吉之伴✕長束恭行✕宇都宮徹壱<2/2>

ドイツ&クロアチアから日本はどう見えたか? 中野吉之伴✕長束恭行✕宇都宮徹壱<1/2>

<2/2>目次

*「クロアチアは楽な相手」というコメントのソースは?

*代表戦でも対立するディナモとハイドゥクのサポーター

*クロアチアにとってのワールドカップは「まずGS突破」

「クロアチアは楽な相手」というコメントのソースは?

──つづいて、ラウンド16で対戦したクロアチアから見た日本代表について、考察してみることにしたいと思います。試合前の日本では、クロアチアと対戦することについて、ある種の楽観論みたいなものが、間違いなくあったと思います。それについて試合後、クロアチアのダリッチ監督が「日本人はわれわれを楽な相手だと思っていた」という主旨の発言をしていました。その発言の元となった、ソースが気になっていたんですが、長束さんはご存じですか?

長束 これ、僕も出どころを調べたんです。すると『羽鳥慎一モーニングショー』で、元日本代表の福田正博さんのコメントがソースだったようです。発言内容を要約すると「クロアチアは格上の相手なので、自分たちのサッカーをしっかりしてくるので、日本にとってはモロッコよりも戦いやすい、組みやすい」と。

  その内容がJ-CASTニュースでウェブ記事になり、その文中で「ゲスト解説の福田正博さんは『日本にとって戦いやすい相手』という」と端折ったんですね。それをクロアチアの大手スポーツ紙が翻訳ソフトを使って「クロアチアは日本にとって簡単な相手だろう」という見出しで記事化し、すぐに国内のメディアが追随。セルビアやボスニアのメディアも食いつき、どんどんと過激なタイトルになってしまったようです。

──なるほど。海外のニュースを適当に翻訳して、自分たちのサイトに載っけてしまうというのは、日本に限らずどこの国でもやっているんですね(苦笑)。この記事、ダリッチ監督だけでなく、選手にも共有されていたかが気になります。

長束 どうでしょうね。実はダリッチの師匠って、1998年大会で3位になった時に監督だった、ミロスラヴ・ブラジェヴィッチなんですよ。師匠がそういう炎上ネタを活用する傾向があったので、もしかしたら選手のモチベーションアップに利用していたかもしれないです。

──中野さんに質問なんですけど、ドイツでは日本とクロアチアの力関係について、どのような見方が一般的だったんでしょうか?

中野 今回の対戦に関しては「五分五分」という評価が一般的だったと思います。ワールドカップでの成績では、もちろんクロアチアのほうが上ですけど、日本はドイツとスペインを破って勢いがありましたから「クロアチアも手こずるだろう」という見方も多かったです。

──思えばドイツは、1998年大会の準々決勝でクロアチアに敗れていますからね。ある意味、両者について客観的に評論できる立場にあると思います。

中野 そういえば、ドイツの戦術系ライターが「クロアチアに負けないのはそれほど難しくないけれど、クロアチアに勝つのは非常に難しい」と指摘していました。引き分けにまでは持ち込めるけれど、勝ち切るのは難しい。それが、ドイツにおけるクロアチアの評価です。

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