不意に視界から消え、不意に現れる 元日本代表、工藤壮人さんを偲んで
「元日本代表の工藤壮人がICU(集中治療室)にいる──」
驚くべき報道を目にしたのは、10月18日の火曜日。ちょうど全社の取材中で、ヴェロスクロノス都農とブリオベッカ浦安の準決勝が終わった直後だった。Twitterのタイムラインには、彼の元チームメイトをはじめ、多くのサッカーファンの励ましのメッセージで溢れている。もちろん私自身、工藤さんの無事を祈りつつも、しかし「最悪の事態」への危惧を払拭できずにいた。
私は「ICU」の3文字から、どうしても2011年の松田直樹さんの死を連想せずにはいられなかった。松田さんはトレーニング中に突然倒れ、そのままICUに運ばれて2日後に亡くなっている。工藤さんの場合、2日に体調不良を訴えて翌日に水頭症との診断を受け、11日に手術。術後に容態が悪化したため、17日にICUに運ばれている。
最初の診断から、手術を経てICUに入るまで2週間以上かかっており、松田さんの時のような切迫感は伝わりにくかった。それは18日の報道や、クラブのリリースを見れば明らかで、現場の医療従事者を除けば「きっと回復するだろう」と楽観していた人も少なくなかったと思う。それだけに、21日の工藤さん逝去の報は、より衝撃的なものに感じられた。
思えば2022年は、まさに「巨星墜つ」というべき訃報が相次いだ。イビチャ・オシム、安倍晋三、稲盛和夫、ミハイル・ゴルバチョフ、そしてエリザベスⅡ世──。これら歴史的な偉人たちとは違った意味で、工藤壮人というフットボーラーの若すぎる死は、われわれファンに図り知れぬ衝撃と喪失感をもたらすこととなった。
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