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【無料公開】ガンバでもセレッソでもない「第3のJクラブ」? FC大阪の立ち位置を30代社長が語る<2/2>

「ラグビーとの共存」をどう考えるのか?

──やはりポイントは「サッカーとラグビーの共存」となるでしょうね。東大阪市花園中央公園エリアの指定管理は、FC大阪を含む東大阪花園活性化マネジメント共同体に託されました。ラグビーファンからしたら「聖地・花園がサッカーに乗っ取られる」という危機感があったかと思います。この点に関して、前社長の疋田さんは「東大阪をサッカーもラグビーもあるイングランドのような街にしたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

近藤 花園でのラグビーとサッカーの共存は、われわれは可能だと思っています。ラグビーのプロリーグは現状、サッカーのように完全なホーム&アウェーではなく、会場は持ち回りなんですね。しかもシーズン開幕は、サッカーは2月でラグビーは12月ですから、完全に被るわけでもない。もちろんピッチの管理の問題はありますが、東大阪にラグビーとサッカーのプロクラブがあれば、花園の稼働率もぐっと上りますから、むしろポジティブな効果のほうが多いと思います。

──6月19日の鈴鹿ポイントゲッターズ戦は、花園第一グランドで開催されて1万2152人を集めました(参照)。「カズが出るかもしれない」という要因もあったと思いますが、ラグビー・ワールドカップを開催したスタジアムでJFLが開催されるというのも、大きかったのではないでしょうか?

近藤 それらに加えて、当日に向けてクラブの全スタッフが汗をかいて頑張ってくれた結果が、1万2152人という入場者数だったと思います。幸い、勝利することもできましたし(10)、地域の人たちにも「FC大阪の存在価値」というものを示すことができたと思います。

──「ラグビーとの共存」を訴えるには、まずサッカーの存在感を高める必要があります。その意味でも、花園第一での初めての試合に勝利できたのは大きかったですね。

近藤 「J3昇格」を口にするのは簡単ですが、成績面だけではなく平均入場者数もまた大きなハードルとなっています。その意味で、6月19日の試合はひとつのインパクトになりましたし、これをきっかけに「また観に行こう」と思ってくださる方も増えていけばと思います。それと指定管理の観点でいえば「花園第一を多くの方々に利用していただく」ことが重要です。これをきっかけに今後、さらに稼働率を挙げていきたいですね。

──稼働率ということで言えば、エコパスタジアムでも最近はラグビーの試合が行われているじゃないですか。あそこもサッカーではあまり使われなくなる一方で、ラグビー・ワールドカップでは日本がアイルランドを破ったことで「聖地」となりました。今後は東大阪以外でも、サッカーとラグビーの共存が話題になりそうですね。

近藤 そのためにはやっぱり、寛大に受け入れていただける環境があってこそだと思います。同じフットボールの仲間として、サッカークラブであるわれわれを受け入れていただき、先行している花園近鉄ライナーズさんと一緒に、いかに東大阪を盛り上げていくか。それについては、すでにクラブ間で話し合いをしているところです。エコパの場合はサッカーが先でしたが、イングランドのように「ラグビーもサッカーもある街」の実現というのは、東大阪こそが最適な土地柄ではないかと個人的には思っています。

──先ほど「Jリーグの風景」というお話がありましたが、「東大阪をイングランドのように」というのも疋田さんの夢でした。この2つのミッションを達成するのが、クラブを引き継いだ近藤さんに課せられたミッションですね。

近藤 その意味でも、6月19日に花園第一でひとつの結果を出したことで、クラブ全体の歯車がカチッとハマったという手応えを感じています。昇格目前だった2年前は、確かにライセンスは持っていましたけれど、どこか歯車が噛み合っていないところがありました。今回は噛み合っている実感がありますので、いい雰囲気で最終節を迎えられるよう、クラブ一丸となって頑張っていきたいと思います。

──チームだけでなく、周囲のさまざまな条件が編み合っている印象を受けていますので、ぜひとも悲願を達成させてください。今日はありがとうございました。

<この稿、了>

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