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【無料公開】ガンバでもセレッソでもない「第3のJクラブ」? FC大阪の立ち位置を30代社長が語る<2/2>

知られざる大阪府との包括連携協定締結

──FC大阪がJFLに昇格した2015年からは、クラブのフロントとしての業務がメインになっていきました。全国リーグに到達すると、次の目標は「大阪第3のJクラブとなること」になります。大きく先行しているガンバ大阪とセレッソ大阪に対して、どのように差別化をクラブとして考えていたのでしょうか?

近藤 JFLに昇格した当初は、まだホームタウンも決まっていない状態でしたから、ガンバさんやセレッソさんには遠く及ばないところにいました。そんな中で「われわれしかできないことって何だろう」と考えた時、当時から応援してくださる企業さんがたくさんいることに気が付いたんです。そうした企業さんに対して「何かしらお役立ちすることができないだろうか」というご提案をさせていただくようになったのが、2015年くらいからですね。

──今で言う「スポンサーアクティベーション」ということでしょうか?

近藤 そうです! そうした活動を通して、われわれを単なるサッカークラブではなく、ビジネスパートナーとして見てくださる企業が増えていきましたね。その延長線上に、2018年に大阪府との包括連携協定締結がありました。

──え、大阪府ですか?

近藤 そうです。2025年の万博誘致であったり、防災であったり、福祉やスポーツであったり。そういったものを、クラブのライブ配信でPRさせていただいたところ、大変喜んでいただけました。そうした取り組みもあって、行政との付き合い方というものも、この頃からいろいろ前進していきましたね。

──なるほど、行政との強いつながりというものが、ガンバやセレッソとの差別化につながったというのが興味深いですね。

近藤 ガンバさんもセレッソさんも、パナソニックとヤンマーという大企業がバックについているじゃないですか。しかも、すでにJクラブとしての実績とブランドもあります。行政側からすれば、バックに大企業がなければブランドもないFC大阪のほうが、一緒に仕事をしやすかったと思うんです。だからこそ包括連携協定を結ぶことができましたし、逆にそれがなければ東大阪市のホームタウン承認も実現しなかったでしょうね。

──その東大阪市ですが、近藤さんはどんなポテンシャルを感じていますか?

近藤 人口でいうと50万都市ですし、町工場が多いので事業社は6000あると言われています。それだけ社長の数も多いわけで、その点だけでも東大阪のポテンシャルは高いという認識です。そういう土地柄ですから、われわれのやり方次第では、大阪のどの地域よりも爆発力はあると考えています。

──スポーツに関してはどうでしょうか。たとえばガンバやセレッソの影響は?

近藤 ほとんどないですね。野球ファンは一定数いると思いますが、それほど熱狂的というわけではない。花園があるので「ラグビーの街」とも言われていますけれど、東大阪の人たちがラグビーファンかというと、必ずしもそうとは言えない。ですので、スポーツに関しては「何色にも染まっていない」わけで、この点についてもポテンシャルは高いと言えるでしょうね。

──ラグビーに関する地元の熱量は、確かにそんな感じですよね。むしろ市外や府外のラグビーファンは、さまざまな意味でFC大阪に注目しているのではないですか?

近藤 それはわれわれも意識しています。誰かを傷つけてまで猛進するべきではないですし、ラグビーファンとの間にハレーションを起こすことも本意ではありません。その点については、これまでどおり地道に進めていきたいですね。

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