宇都宮徹壱ウェブマガジン

ゼルビア×キッチンはなぜ一般営業を休業するのか Jクラブが飲食店を持続させるための課題を考える

 先月15日、FC町田ゼルビアの公式サイトに「ゼルビア×キッチン 今後の運営について」というリリースが掲載された。

 ゼルビア×キッチンは、トップチームから育成年代の選手たちの食の環境改善を目的に、2015年10月に開業。当時はクラブハウスがなく、提携していた定食屋も自転車で30分ほどの距離が離れていたため、子供たちに温かい食事を提供できないという課題をクラブは抱えていた。それがゼルビア×キッチンのオープンによって、トップの選手は食事の選択肢が広がり、育成年代の子供たちも練習後に夕食を摂ることが可能となったのである。

 単に、食の環境改善だけではない。地域住民やファン・サポーターなど、一般客も自由に利用できたのが、ゼルビア×キッチンの画期的なところ。選手たちが普段から食べている、栄養のバランスが考え抜かれたメニューを、誰もがお手頃価格で楽しむことができる。タイミングが合えば、選手と出会えるかもしれない。飲食店の枠を超えた、まさに夢のようなコミュニティであった。

 そんなゼルビア×キッチンが、6月30日をもって一般営業を休業。《今後はアカデミーチーム、トップチームのための営業、また、団体お弁当受注に特化して運営》するという。このリリース以降、名残を惜しむ地元ファンを中心に、ゼルビア×キッチンは大いに賑わうこととなる。かくいう私もそのひとり。まずは「日替わりアシスト定食」900円をいただいてから、決定の理由について当事者に話を聞くことにした。

「リリースを出して以降、確かにお客さまの数は増えましたね。いつもこれくらい来ていただけると、もっとよかったんですけれど(苦笑)。SNSを見る限り(今回の判断を)ご理解いただけるコメントが多かったので、少しほっとしています」

 そう語るのは、株式会社ゼルビアの代表取締役社長、大友健寿さん(写真右。左は店長の杉村祐貴さん)。ゼルビア×キッチンができた当時、大友さんは役員ではなかったため、プロジェクトの立ち上げに直接はタッチしてない。が、一般営業の休業を判断したのは大友さん。果たして、決断を促したのは、コロナ禍の影響なのか、それとも食材の価格高騰によるものなのか。大友さんの答えは、少し意外なものであった。

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