カズへのオファー、アルベルとの思い出、そして新潟への想い 是永大輔(アルビレックス新潟シンガポール代表)<1/2>
Jリーグ開幕まで1カ月となり、各クラブの始動の様子が報じられる今日この頃。注目を集めているクラブのひとつが、5年ぶりの指揮官交代となったFC東京であろう。アルベル・プッチ・オルトネダ新監督は、FCバルセロナの元アカデミーダイレクターというキャリアを持ち、バルサの育成メソッドに知悉した指導者。いきなりバルサ化しなくても、FC東京のスタイルが変わるのは間違いないだろう。
そんなアルベル監督について、最近あちこちで本人へのインタビューを含む記事を目にするようになったが、個人的に不満に思っていることがある。それは「誰がアルベルを日本に連れてきたか?」が、ほとんど語られていないことだ。FC東京の前に指揮を執っていたのは、J2のアルビレックス新潟(当時の登録は「アルベルト」だった)。2019年当時、ニューヨークにいた彼を新潟に招聘してきたのが、今週のゲストである。
現在、アルビレックス新潟シンガポールで代表を務める是永大輔さんには、2年前の秋に新潟まで出向いてインタビューしている。テーマは、このシーズンからアルビレックス新潟で始まっていた「バルサのメソッドの導入」について。当時、クラブ社長だった是永さんが語った「ニューヨークでのアルベルとの出会い」は、あまりにも素敵なエピソードだったので、これを原稿にするのはとても楽しみだった。
ところが結果として、その原稿はボツとなってしまう。新潟取材を終えた直後、当時所属していた2選手(ファビオとペドロ・マンジー)が、酒気帯び運転とその幇助による道交法違反を起こしたことで契約解除。さらに「Jリーグへの報告義務を怠った」ことへの責任をとる形で、是永さんはその年いっぱいで社長を辞任して新潟を去ることとなった。一連の出来事を受けて、私は当WMに2本のコラムを寄稿している。
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あれから1年5カ月。今は拠点をシンガポールに戻し、意欲的にビジネスを展開している是永さんに、久々にお話を伺う機会を得た。直接的なきっかけはアルベル監督だが、上掲した2本のコラムの答え合わせをしておきたいという思いもあった(やはり「書きっぱなし」はよろしくない)。断られることも覚悟したが、是永さんは快く取材に応じてくれた。
オンラインでのインタビューが行われたのは、ちょうどカズこと三浦知良の鈴鹿ポイントゲッターズ移籍が発表された日。実はアルビ・シンガポールも、カズに熱烈なオファーをしている。まずはその件から、是永さんに語っていただくことにしよう。(2022年1月11日、オンラインにて取材)
<1/2>目次
*もしもカズがシンガポールでプレーしていたら?
*バルサが素晴らしいのは「フットボールの言語化」
*初対面のアルベルと1日中サッカーの話をしていた
■もしもカズがシンガポールでプレーしていたら?
──今日はよろしくお願いします。たまたま本日、三浦知良選手の鈴鹿ポイントゲッターズへの期限付き移籍が発表されました。移籍先については、J2から地域クラブまで8クラブが名乗りを挙げていたわけですが、その中でも唯一の「海外クラブ」がアルビレックス新潟シンガポール。まずはカズにオファーした理由と、どれくらいのリアリティを持っていたかについて……。というか、オファーはしたんですよね(笑)?
是永 してないと言ったら嘘になりますね(笑)。話も聞いていただいて「とてもありがたいです」というようなことも言っていただけました。
──対面でお話したのでしょうか?
是永 その時、自分は日本で隔離中だったのでオンラインでした。カズさんは海外でのプレーに興味を持っているし、さらにアジアでのプレー経験はなかったので、会話からある程度のリアリティは感じられました。ただ、鈴鹿が第一候補だったとは思いますが。
──今回、カズにオファーしたクラブが、J2、J3、JFL、地域リーグという4つのカテゴリーがある中で、アルビ・シンガポールの名前があったことが、個人的にはとってもうれしかったですね。「アジアでプレーするカズ」というのも見てみたかったし。
是永 やっぱりカズさんは、僕らサッカーファンにとってレジェンドなので、いつまでも輝いていてほしいんですよね。もし、次のチャレンジの場がシンガポールだったら「ああ、やっぱりすごい」と、あらためてリスペクトされると思うんですよ。それともうひとつ、去年(2021年)が日本とシンガポールの国交樹立から、55周年だったんですよね。
──確か1966年でしたよね。その翌年にカズは生まれています。
是永 ですよね! シンガポールは健康や健康寿命を延ばすということに関して、国策として取り組んでいます。そういう意味でも、今年で55歳になるカズさんは、シンガポールのシンボル的な存在になり得るじゃないですか。しかも、アジアのスーパースターとしての知名度もある。カズさんがシンガポールと日本の架け橋になってくれたら、ストーリーとしても最高じゃないですか!
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