宇都宮徹壱ウェブマガジン

11年ぶりの3大タイトルとピクシーの記憶 名古屋グランパスのルヴァン杯優勝に寄せて

 10月30日、埼玉スタジアム2002で開催された2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝にて、名古屋グランパスがセレッソ大阪に20で勝利。同タイトルを初めて獲得した。今週は、この快挙について書いてみようと思うのだが、すでにゲームレポートは出尽くしている。そこで本稿は、極めて個人的な体験に基づきながら、今回の快挙をエッセイ風に綴ってみることにしたい。

 名古屋の選手たちが優勝トロフィーを掲げた瞬間、本来その場にいるはずだった選手のことを思い出した。名古屋のキャプテンにして元日本代表、丸山祐市である。5月15日の清水エスパルス戦で負傷。「右膝前十字靭帯部分損傷及び内側側副靭帯損傷」と診断され、クラブ側の発表では「全治には6カ月から8カ月かかる」とのこと。手術から2カ月後、当人にオンラインで話を聞く機会があった。当時の記事から、彼の言葉を引用する。

「コンディションも良かったし、今年のACLに懸ける思いもありました。それだけに、シーズン半分もいかないところで終わってしまったのは残念。キャプテンマークも託されていましたので、ピッチ上で貢献できないことへの悔しさもありました。ようやく気持ちの切り替えができたのは、オペの日が決まってからでしたね」

 ルヴァン決勝での名古屋は理想的な守備を見せて、3日前の天皇杯準々決勝で03で敗れている相手をクリーンシートで仕留めた。今季の名古屋は、9試合連続クリーンシートを達成し、無失点時間記録を823分まで更新している。その中心にいたのが守備の要の丸山だった。来季の完全復帰に向けて、懸命のリハビリを続ける中、歓喜に湧くチームメイトたちをどんな思いで見守ったのだろう。

(残り 1628文字/全文: 2407文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ