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【無料公開】『フットボーラー独学術 生きる力を自ら養う技法』柴村直弥著

 海外ではシンガポール、ラトビア、ウズベキスタン、そしてポーランド。国内では、J1、J2、JFL、東海1部、そして東京都1部でプレー。現在は都1部のSHIBUYA CITY FCに所属する現役フットボーラー、柴村直弥選手の初の著書が届いた。今回は「おわりに」から引用することにしたい。

 私は日本代表であったわけでもJリーグで華々しい活躍をしたわけでもなく、そして著名なわけでもありません。私の自伝を書いたところで興味を持ってくれる方は少ないでしょう。また、サッカーの戦術について書いたところで信憑性が低いとも自覚しています。しかし、私には10年前の2011年に海外へ売り込んでいった経験、欧州やアジアなどの海外でプレーした経験の他に、そこに至るまでに取り組んできたことが繋がってきた経験、取り組んできたことが成果となって現れた経験がありました。

 私は昔から、現役フットボーラーとはなるべく距離を置くようにしているのだが、その数少ない例外が柴村選手である。それは彼自身がプレーヤーを続けながら、解説者や執筆者としても活動していることと無縁ではないだろう。柴村選手に初めて出会ったのは、今から10年前。ラトビアのヴェンツピルスというクラブでプレーしていた時のことだ。その時のインタビューはこちら(WM会員限定)

 私が、柴村直弥というフットボーラーに注目したのは、当時東海1部だった藤枝MYFCから、ラトビアのクラブに飛躍するプロセスに興味があったからだ。この飛躍を可能ならしめたのが、本書に書かれた彼独自のスキル。本書では「学ぶ」「試す」「知る」「話す」「考える」「書く」といった、困難な時代を生き抜くためのスキルが詰まっている。サッカー選手でなくても、すんなり受け止めて実践できそうなアドバイスばかりだ。

 ブックライターとして本書を見た時、強く実感するのが「選手もの」の新たな可能性である。これまでの「選手もの」といえば、圧倒的知名度を誇る日本代表やJリーガーがほとんど。そうしたキャリアを持たずとも、われわれに感動のみならず教訓を与えてくれるフットボーラーは間違いなく存在する。私が現在、構成として取り組んでいるこちらの企画も、まさにそういった選手にフォーカスしている。

 版元のカンゼンは、私もお世話になっている出版社。あえて職業ライターを使わず、選手自らが執筆している点も含めて、今後はこうした方向性の書籍は増えていくだろう。実際「自分で書けるアスリート」は、明らかに増えているからだ。定価1700円+税。

【引き続き読みたい度】☆☆☆☆★

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