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「決して甘くなかった」都リーグを突破して思うこと 岩本義弘(南葛SCゼネラルマネージャー)<2/2>

「決して甘くなかった」都リーグを突破して思うこと 岩本義弘(南葛SCゼネラルマネージャー)<1/2>

<2/2>目次

*「都リーグはそんなに甘いもんじゃない!」

*葛飾区に2万人収容のスタジアムができる?

*アンダーカテゴリーならではの「やりがい」

「都リーグはそんなに甘いもんじゃない!」

──岩本さんは常々「都リーグはそんなに甘いものじゃない」とおっしゃっているじゃないですか。そういう境地に至ったのは、やはり関東2部に昇格するのに3年かかったことに起因していると思うんです。おそらく最初は、もっと違った見方をしていたと思うのですが。

岩本 そうでしたね(苦笑)。1年目はそれほどハードな練習もしていなくて、あっさり都1部で優勝してしまって、そこで勘違いをしてしまいました。

──なるほど(笑)。関東社会人サッカー大会では、2回戦で東邦チタニウムに01で敗れた時は「こんなはずでは」と思ったのでは?

岩本 正直、こっちが勝ってもおかしくない展開でしたしね。でも今にして思えば、勘違いしたまま上がらなくてよかったと思っています。

──FC今治の岡田武史さんも、まったく同じことを言っていましたよ(笑)。世界を知っている人ほど、地域リーグや都道府県リーグまで下りていった時に初めて、勝負の厳しさはカテゴリーに関係ないことを痛感する傾向がありますね。

岩本 実は島岡監督も当初、東京都1部のことをよくわかっていなかったところがあったんです。去年の試合映像を見ていないことを知った時、思わず「都リーグはそんなに甘いもんじゃない!」って怒鳴ってしまったことがありました(苦笑)。

──そんなことがあったんですか(笑)。

岩本 監督は最初「相手のスカウティング映像はいりません」というスタンスだったんです。でも、われわれの仕事って、勝利の可能性を1%でも上げるために、あらゆる努力をすることじゃないですか。去年の試合映像は全部揃っているんだから、まずはそれをちゃんと見てくれと。どう戦うかは任せるけれど、スカウティングは完ぺきにやってほしいということを、強く要望しましたね。幸い監督は理解してくれましたし、コーチの高木健旨とGM補佐の田山(義高)が、素晴らしいスカウティング資料を作ってくれたので助かりました。

──今の「都リーグはそんなに甘いもんじゃない!」って言葉、まさに身をもって経験したからこそだと思うんですよ。これまでワールドカップの取材やセリエAの解説なんかで、非常に高いレベルのサッカーばかりに接してきた岩本さんですが、都リーグと関わるようになって、サッカーに対する見方や考え方に変化はありましたか?

岩本 これまで以上に、Jリーガーに対するリスペクトが強まりましたね。特にJ1でプレーしている選手なんて、僕らからしたら天上人ですよ!

──なるほど(笑)。一方で、このカテゴリーを経験することで、新たな発見もあったのではないでしょうか?

岩本 発見という意味でいえば、思った以上に選手のレベルが高いことでしたね。これは大げさではなく、東京都リーグ1部でも、能力やテクニックではJリーガーと比べて遜色のない選手って、けっこういるんですよ。それこそ大学時代は、普通に関東大学リーグの1部でレギュラーだった選手もゴロゴロいるわけですから。

──わかります。あの中村憲剛だって、ちょっと運命の歯車が違っていたら、佐川急便東京でプレーしていたかもしれないというのは、わりと有名な話ですし。

岩本 なぜ彼らが、Jリーグではなく都リーグでプレーしているのか。理由はさまざまだと思います。単純に勇気がなくてプロにチャレンジせず、働きながらプレーを続ける道を選んだ選手もいますし。そうして考えると、Jリーグで光を放っている選手たちって、本当にすごいなと、あらためて思います。

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