宇都宮徹壱ウェブマガジン

新著『フットボール風土記』が求められる理由とは? 4時間で50冊が売れた現象に関する著者なりの仮説

 新著『フットボール風土記』の作業がすべて終わり、すぐさま新たな旅に出発することとなった。今回は9泊10日という、私の国内取材としてはロングラン。そのうち試合の取材は5試合だが(J3、天皇杯、J2、そしてJFL2試合)、それ以外にもインタビュー取材が3件、さらに試合以外の写真集の撮影もある。以前の日記でも触れたが、年内に出版予定だった写真集の企画がコロナ禍で延期となり、移動できるうちにどんどん撮影しようと考えた次第。そのため旅の出だしは、富山三重和歌山という強行軍となった。

 さて、富山滞在中の土曜日。当WMにて『フットボール風土記』サイン本の予約販売を受け付けたところ、わずか4時間で初回入荷分の50冊が売り切れてしまった(お買い上げいただいた皆さん、本当にありがとうございました)。この現象については非常に驚くと同時に、書き手として興味深くも感じていたので、このようなツイートをしている。

 実はこの問題提起には、いくつかの伏線があった。まず、LINEの塩畑大輔さんにお話を伺った際、「サッカーを含めたスポーツ記事は、芸能と比べると思ったよりも読まれていない」と指摘されたこと(その理由については、今週掲載予定のインタビュー記事をご覧いただきたい)。それから、毎年サッカー本大賞を主催しているカンゼンの関係者から「このところサッカー本の数が減ってきている」という話を聞いたこと。さらに、タグマ!の村田要さんからは「最近、どの番記者さんも疲弊している」と教えてもらったこと。

 これらは一見すると、いずれもバラバラな情報ではある。だが、私が禄を食む業界が抱える問題点として、低通しているようにも感じられる。そして、その間隙を突くような形で、私の新著への関心が高まったのではないか──。と、かような仮説を立てるに至った。この仮説が正しければ、およそ歓迎すべき状況とは言い難い。本稿では、私の仮説を言語化することを試みている。当然、異論もあるだろうから、議論のきっかけとなれば幸いである(なお今回は、新著の終盤を飾る写真をサムネイルに選んでみた)。

(残り 2300文字/全文: 3242文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ