宇都宮徹壱ウェブマガジン

キャリアの「引き際」を見極める大切さと難しさ 内田篤人の現役引退がわれわれに問いかけるもの

 今週の月曜日、Zoomにて内田篤人の現役引退会見が行われた。さまざまな記者からの質問に、よどみなく切り替えしていくやりとりを見ながら、ふいに思い出したのが2013年9月にOAされた『徹子の部屋』である。これまで数百回ものインタビューに応じてきたであろう内田だが、おそらく黒柳徹子こそが最強(怖)のインタビュアーではなかったか。何しろサッカーに関する共通認識がない上に、相手に忖度することなど微塵も考えていない人が相手なのだから。

 実際、この回の黒柳のトークは強烈だった。ザック・ジャパンを「ジャック・ジャパン」、トレーニングを「お稽古」と言うのは序の口。鹿島アントラーズに入団したことについて「静岡の(クラブ)?」とか、ドイツ人選手の体格がいい理由について「ソーセージを食べているから?」とか、素っ頓狂な質問を連発する。そのたびに内田は苦笑しながら、実に丁寧に受け答えしている姿が印象的だった。そして、あらためて思った。この人は頭が良くて物怖じしないだけでなく、とても気配りができる人なんだな、と。

 今週はやはり、このほど現役引退を発表した、内田篤人について語らなければなるまい。もっとも私は、日本代表の取材を除いては、彼との接点はほとんど持ち得なかった。育成年代、あるいは鹿島の熱心なウォッチャーではなかったし、ドイツでプレーしていた彼を現地取材することもなかった。代表のミックスゾーンでコメントを拾うことはあっても、マンツーマンでのインタビューをする機会はゼロ。そんなわけで本稿では、今回の彼の決断を受けて深く感じたことを、自分なりに言語化してみようと思う。

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