宇都宮徹壱ウェブマガジン

ドームCEO 安田秀一が語る コロナの時代と東京五輪のこと

【無料動画】ドームCEO 安田秀一が語る いわきFCのこと、沖縄での日米野球のこと

 今週は、このほど『スポーツ立国論』を上梓した、株式会社ドームCEOの安田秀一さんにご登場いただいている。昨日の無料動画に続いて、今日は会員向けのテキストで、貴重なインタビューをお届けすることにしたい。内容もJリーグや地域活性といった話題から、1年延期が決まった東京五輪、そして今般のコロナ禍といったタイムリーかつヘビーなものに移行していく。アンダーアーマーの日本における総代理店であり、いわきFCの親会社でもあるドームにとっては、いずれも重大かつシリアスなテーマだ。

 現状については「とにかく、ひたすら耐える。それしかないですよ」と語る安田さん。ただし単にビジネス上のことで、東京五輪の延期やコロナ禍のことを懸念しているわけではない。この人の提言や主張については、正直なところ肯首できないことも少なからずある。それでも私は、愛するスポーツに底知れぬポテンシャルを感じていること、そしてスポーツで日本を良くしたいと本気で考えていること、この2点において安田さんを全面的に支持したいと思っている。

 私と安田さんは、昭和40年代生まれの同世代。『スポーツ立国論』を読んでいると、同じ時代の空気を感じつつも、まったく異なる価値観の中でキャリアを積んできたことを痛感する。普通に考えれば、出会う可能性が皆無だったと言ってよい。それが、このような形で二度もインタビューさせていただけたのは、いわきFCという共通項があったからに他ならない。つくづく、人生とは不思議なものだと思う。そんなことをあらためて感じ入った、今回の取材であった。(取材日:2020年4月3日@東京)

<目次>

*一流のアスリートは負け戦でジタバタしない

*試合ができない中で選手に考えてほしいこと

*そもそも五輪に税金を投入すべきでない理由

一流のアスリートは負け戦でジタバタしない

──先週、東京五輪の延期が決定されました。御社にとって、やはり相当なダメージがあったんでしょうか?

安田 めちゃめちゃありますね(笑)。やっぱり五輪に向けて、いろいろな仕掛けを計画していましたから、これはデカいですよ。ただ僕自身、2月の後半くらいには「これは開催できるわけない」と思いましたからね。

──そういう時って、どうやって頭をスイッチされたんでしょうか?

安田 それはスポーツマンだからできると思うんですよ。アメリカの一流の経営者は、さまざまな修羅場を乗り越えているわけですけど、それは一流のアスリートと同じ発想だと思うですね。その意味で僕は、一流アスリートだったJOCの山下(泰裕)会長がずっと「開催しか考えていない」と言い続けていたのは残念でしたね。

──本心から、そう思っていたんでしょうか。あるいは立場的に「無理」とは言えない状況もあったのか、気合で乗り切れると信じていたのか。

安田 本来はスポーツマンこそが、失敗や敗北というものを一番受け入れられる人たちだと思うんですよ。あのダルビッシュ(有)さんも、素晴らしい実績を残している一方で、ボコボコに打たれてマウンドを降りたことが何度もあります。「これは負け戦だな」と思った時に、ジタバタしないのが一流だと思います。でも、010で負けているのに「まだまだ!」とか言ってしまう人が、元アスリートでもいるんですよね。まあ、山下さんの場合、負けたことがほとんどない人でしたけど(笑)。

──確かに(笑)。とはいえ、これまでは2度の世界大戦で五輪が中止になったことはありましたが、まさかウイルスの世界的な蔓延によって延期になるとは、誰も想像できなかったことですよね。

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