元Jリーガー 嵜本晋輔が「サッカーを手放して」得たもの ガンバを解雇された男が起業して上場するまで<2/2>
■起業からわずか7年で上場を実現させた「引き寄せ力」
──嵜本さんのプロフィールを語る上で、欠かせないのが「元Jリーガー」という肩書と18年の「マザーズ上場」という輝かしい実績です。サッカーからビジネスに転身した時、最初から上場というのは考えていたのでしょうか?
嵜本 さすがに最初からは考えていなかったですね。私の父が経営した会社は、いわゆるリサイクルショップだったんですけど(年商)10億も行っていないくらいで、その頃は地域に愛される規模感でしか考えていませんでした。今となっては笑い話ですけど、私自身も最初は月給20万からのスタートでした。ただ、仕事を続けているうちに「もっとこんなことができるんじゃないか」と考えるようになって、そのうちビジネスの視野が広がるようになって、「上場」というものを意識するようになりましたね。
──とはいえ上場というのは、単にビジネスセンスだけあっても難しいと思います。実現にあたって、どういった強みがご自身にあったと考えていますか?
嵜本 一言でいえば「引き寄せ力」ですかね。上場というのは、経営者の独力でできるものではなく、チームに恵まれないと達成できないと思います。私自身、周囲の仲間に恵まれているとは感じていますけれど、たまたまではなく何か理由があって集まってくれていると信じています。自分で言うのも変ですが、私自身のビジョンとかパーソナリティーといったものに共感したからこそ、集まってくれたのが今のコアメンバーだと思っています。
──つまり、それが「引き寄せ力」だと?
嵜本 そうです。ですから逆に、自分の「引き寄せ力」がなくなってしまったら、おそらくこの会社はなくなると思っています。今はこの会社のオーナーですから、クビになることは基本的にあり得ないんですが、かつてガンバでクビになった経験が自分にはあります。ですから、オーナーとなった今でも「いつ戦力外になるかわからない」という危機感を持ちながら、ビジネスをやっています。会社の成長以上に自分自身が成長できず、社員や世の中から「魅力がない経営者」と思われたら、そこで終わりですから。
──なるほど。ところでガンバに入団した3年目の嵜本さんに、契約更新をしないと決めたのは、監督就任から2年目の西野朗さんでした。興味深いのが、嵜本さんが最近上梓した『戦力外Jリーガー 経営で勝ちにいく 新たな未来を切り拓く「前向きな撤退」の力』という本に、その西野さんが帯を書いているんですよね。しかも推薦文が「戦力外からこれほどの学びを得られる選手はいない」という(笑)。
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