宇都宮徹壱ウェブマガジン

「時代に合わなくなった価値観」と「被害者の視点」湘南ベルマーレのパワハラ疑惑についての個人的見解

 元プロ野球選手で、前人未到の400勝投手として知られる金田正一さんが、10月6日に亡くなった。86歳だった。といっても、最近はメディアへの出演機会も極めて限られていたから、40代でもご存じない人は少なくないだろう。かくいう私自身、この人の現役時代はまったく覚えていない(何しろ現役を引退したのは今から50年前だ)。むしろTVアニメでの『巨人の星』とか『侍ジャイアンツ』の再放送を通して、この人の現役時代を初めて知ったように思う。

 リアルタイムで知っているカネやんは、ロッテオリオンズの監督時代、特に第2次政権(1990~91年)である。ただし、いいイメージはほとんどない。成績が振るわなかったこと(1年目は5位、2年目は6位)以上にネガティブな記憶となっているのが、およそスポーツマンとは思えぬ乱暴狼藉の数々。選手同士の乱闘になれば、止めるべき役割なのを忘れて先陣を切り、相手選手の顔面に蹴りを入れたり、バットで威嚇したりしていた。審判への暴言も日常茶飯事で、退場の回数は現役時代の2回を含めて8回も記録している。

 故人を追悼する映像では、こうした乱闘シーンが「昭和のプロ野球の風景」として流されていた(2度目のロッテ監督時代はすでに平成だったが)。この映像には、正直なところ大いなる困惑と違和感ばかりを覚える。「昭和の子」を自認する私も、今は令和の時代の価値観の中で生きているからだ。今般問題となった湘南ベルマーレのパワハラ疑惑も、突き詰めれば「時代に合わなくなった価値観」とどう向き合うかという、決して容易ではないテーマに突き当たる。要するに「俺たちの時代は~」が、もはや通用しなくなっているのだ。

(残り 1933文字/全文: 2632文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ