宇都宮徹壱ウェブマガジン

「AかBか」ではなく「AもBも」という発想 反目する両フットボールファンを見て思うこと

 ラグビーワールドカップの取材を続けている。本稿を書いているのは、神戸から大分に移動する途中の新幹線。昨日、サモアに大勝したスコットランドのサポーターたちが、談笑しながら私の側をのっしのっしと通り過ぎていく。こうした感覚、まさに2002年のワールドカップと一緒だ。サッカーとラグビーの違いはあれ、私は(そして私たちは)今、17年ぶりに自国で開催されている「ワールドカップ」を心から楽しんでいる。つくづく、今大会の当事者になって良かったと痛感する日々である。

 一方で最近、いささか気になることがある。それはSNS上における、ラグビーファンとサッカーファンの意見の小競り合い。「ラグビーは紳士のスポーツ」というテーゼを立脚点として、やれ「ラグビーはレフェリングに異議をしない」とか「ラグビーでは選手が痛そうに転げ回ったりしない」とか、「ラグビーはワールドカップで勝ってもスクランブル交差点で騒がない」なんていうのもあった。こうした議論のきっかけとなったのは、むしろサッカー側からの新鮮な驚きが背景にあったものと思われる(参照)

 最初のうちはサッカーファンも、ラグビー日本代表の初戦での勝利に歓喜していた。「ラグビーって意外と楽しい!」と感じる人も少なくなかった。しかしJ1リーグが再開して以降も、スポーツニュースやSNSではラグビーワールドカップの話題ばかり。こうした状況が続くうちに、この状況を面白くないと感じるサッカーファンも現れるようになる。実際「審判に文句を言わないのは、異議が厳しく禁止されて『言えない』だけでしょ?」とか「代表が負けたらブームも終わるよ」といった、サッカー側のツイートもいくつか見かけた。

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