宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】「タイガーマスクは意識していなかったです」 ティガーマスク(ヴァンラーレ八戸サポーター)<2/2>

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南部文化圏と津軽文化圏

——ここで青森県のサッカー事情について教えてください。青森って地政学的に面白くて、それほど大きな県ではないんだけど、八戸市があって、青森市があって、弘前市があるじゃないですか。仙台市がある宮城県、あるいは盛岡市がある岩手県みたいに、一極集中していない。もともと江戸時代に、いくつかの藩に分かれていたと思うんですけど、やはり言葉や文化にそうした影響って出ているんでしょうか?

ティガー 間違いなくありますね。八戸は盛岡寄りの南部藩でしたし、弘前市は津軽藩でしたから。

——たとえば県立の高校に進学すると、いろんなところから学生が集まるわけで、そうした文化摩擦みたいなものもあったんでしょうか?

ティガー 今の若い人は、ほとんど大丈夫だと思うんですよ。言葉にしても、ほとんど共通語に近くなっているんで。ただ自分たちが高校の頃は、言葉が違うので通じ合わないこともありましたね。現役でサッカーやっていた時、津軽のほうで試合があって、試合後にそっちのほうで打ち上げがあったんですね。でも、言葉がまったくわからなくて(笑)、それで怒って帰ってしまったことがありましたね。

——意外と気が短いんですね(笑)。ところで青森といえば、ヴァンラーレ以外にも、上を目指すクラブがあるみたいですが。

ティガー ありますね。ラインメール青森、ブランデュー弘前。

——現在、八戸のクラブが最もJに近い場所にいるわけですが、今後は県内の各クラブがひとつになる可能性はあるんでしょうか?

ティガー 難しい問題ですが、いずれはそういう時期が来るかもしれませんね。もちろん、それぞれのサポーターで思うところがあるわけですけれど、J1 J2を目指すのであればそうならなければならないと思います。J3が目標であれば、なんとか各クラブでやっていけるのかなとも思いますが。

——長野パルセイロと松本山雅のように、ひとつの県でJを目指すクラブが共存するというのは、青森では難しいですかね?

ティガー 現在の県内の経済状況から考えると、かなり厳しいと思うんですよね。これはあくまで個人的な予想ですけど、東北1部のラインメール青森とブランデュー弘前は、いずれは一緒になると思うんです。同じ津軽文化圏ということで。そこから今度は、南部文化圏の八戸と一緒になるかどうかという問題になると思うんですが、じゃあそれぞれがJ3よりも上を目指せるかというと、やはり経済的な基板という面で厳しいんじゃないかと思うんですよね。

——あと、もうひとつの問題はスタジアムですよね。

ティガー J基準のスタジアムは、いまのところ八戸にはないですね。ただ、来年の3月にオープン予定のスタジアムが、日本初のJ3スタジアム基準ということになるそうです。

——どこにできるんですか?

ティガー 八戸市の多賀地区です。震災の津波で被災した地域なんですよ。

——青森の被災地って、あまり語られることはありませんが。

ティガー けっこう被害は受けているんで。そこに津波避難タワーっていうのを国の予算で建てることになって、だったら地域の避難所も兼ねてスタジアムを作ろうということになったみたいです。本当に3月にできるかはわかりませんが、すでに着工はしています。

——これは楽しみですね。

ティガー そうですね。今は陸上競技場で試合を見ているんですけど、トラックがあるのでやっぱり遠いんですよ。今度は球技専用で電光掲示板も設置されるので、今からとても楽しみです。

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