われわれは「忖度ジャパン」とどう向き合うべきか? 『東欧サッカークロニクル』を読みながら考えてみる
かねてより楽しみにしていた『東欧サッカークロニクル』を献本していただいた。著者の長束恭行さんは、クロアチア語に堪能な東欧サッカー取材の第一人者。今から12年前にザグレブとスプリトを取材したときには、コーディネーター兼通訳をお願いしたことがある。長束さんと一緒に、ニコ・クラニチャールやアリョーシャ・アサノヴィッチ、そして代表デビューしたばかりのルカ・モドリッチにインタビューしたのも良い思い出だ。
本書では、クロアチアやセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナといった旧ユーゴスラビア諸国だけでなく、バルト3国やアイスランドやキプロスといったマイナーな小国にも現地取材。それぞれのサッカー事情について、非常に興味深く読ませていただいているのだが、長束さんの文体が最も冴え渡るのは、やはり長年暮らしてきたクロアチアについてであろう。移籍ビジネスで私腹を肥やし、ディナモ・ザグレブ会長とクロアチアサッカー協会副会長にまで上り詰めた、ズドラヴコ・マミッチ。そのマミッチの後ろ盾を得て、協会会長となったダヴォル・シュケル。前者の狡猾さと後者のお粗末さについて、長束さんの筆は容赦なく切り裂いてゆく。詳しくはぜひ、本書をお読みいただきたい。
その後マミッチは、それまでの悪行が露見して15年に逮捕され、クラブ会長と協会副会長のポストは失ったものの、いまだに代表の人事に影響力を行使しているのだそうだ。一方のシュケルは会長職に留まっているが、サポーターとの対立は継続中。14年11月のイタリアとのアウエー戦では、クロアチアの応援席から大量の発煙筒を投げ込んで10分ほど試合が中断したことがあったが(参照)、今後もこうした不祥事が繰り返されることは容易に想像できる。
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