宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】EURO 2016取材と「セルフポートレイト」 短期連載『徹壱の仏蘭西日記』最終回 6月20日(月)@リヨン

■「原点回帰」となったフランスでの日々

 フランス滞在10日目。今日の夜、リヨン・サン=テグジュペリ空港(『星の王子さま』の作者はリヨン生まれである)からドバイ経由で帰国する。この日、リヨン・パール・デュー駅周辺では、サンテティエンヌでのスロバキア戦に向かうイングランドサポーターを多数見かけた。しかし今日は彼らを追いかけることはせず、あえてサッカーから離れてリヨン観光を楽しむことにした。訪れたのは、ソーヌ川沿いにあるユネスコの世界遺産にも登録されている旧市街、そしてリヨン美術館。ただし美術館についてはコレクションが膨大だったので、企画展のみを鑑賞した(内容については後述)。

 さて、最終回となる今回は、私にとってのEURO 2016取材について、現時点での総括を行うことにしたい。ただし「総括」といっても、ピッチ内についてではなく、取材を終えた自分自身についてであることをあらかじめお断りしておく。前回大会から参加国が8チーム増えて24カ国となった今大会。出場国の中には、アルバニアや北アイルランドのように、普段なかなかお目にかかれないナショナルチームも少なくない。そんな彼らの戦いぶり(選手のみならずサポーターも含めて)を、この機会に現地で観ておきたいというのが、今回の取材の主目的であった。

 フランスでの滞在を大会の前半に絞ったのは、EUROのニューカマーたちを(彼らが脱落する前に)観ておきたかったからだ。また10日間という取材期間についても、あまり長すぎると現地の空気に慣れて倦んでくるし、滞在や移動にかかる費用だって馬鹿にならない。そう考えると、タイミングについても滞在期間についても、私にとっては極めて適正であった。大会そのものは、まだグループリーグのゲームが残っており、本当の盛り上がりはこれからである。しかしながら、私の中では「当初の目的は果たせた」と認識しているので、決勝トーナメントについては帰国後にTV桟敷でのんびり観戦することにしたい。

 ところで今回の取材は、私にとって「原点回帰」の意味合いが非常に濃厚なものとなった。EUROという大会を現地観戦するのは、2004年のポルトガル大会以来8年ぶり。フランス各地を回りながらファンゾーンでサポーターの写真を撮るのも、98年のワールドカップ・フランス大会以来18年ぶりである。また、現地で出会ったさまざまな国のサポーターを撮影しながら、彼らの祖国を旅した記憶が鮮明に蘇ることもたびたびあった。そうした日々の出来事を『日々是』形式でアップすることもまた、私にとって「原点回帰」そのものであったと言ってよい。

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