宇都宮徹壱ウェブマガジン

人口33万人の島国が歴史を刻んだ日に想うこと 短期連載『徹壱の仏蘭西日記』第4回 6月14日(火)@パリ〜リール

■かつてハリルホジッチが指揮を執った街で

 フランス滞在4日目。グループリーグ1巡目最後の日となるこの日、パリに別れを告げて次の目的地であるリールに移動した。パリ北駅からリール・ウーロップ駅までは、鉄道で約1時間の距離。とはいえ、フランスでの鉄道の移動は久しぶりだったので、チケットの購入にはかなり手間取ってしまった。13時すぎに目的地に到着。2日後のリヨンに移動するチケットを購入して、それから駅構内のレストランで昼食を摂る。ナイフとフォークで骨付きポークをさばいていると、マシンガンを手にした武装警戒がパトロールしている姿がたびたび視界に入ってきた。大都市パリから地方都市に移動して、多少の緊張感から解放されたのも束の間、やはり警備の厳重さはどこも変わらないようだ。

 今大会の会場で、最も北に位置するリールは、ベルギーとの国境に近く、かつてはフランドル伯領として栄えた歴史を持つ。人口25万人ほどのこぢんまりとした街ながら、ここを本拠とするLOSCリール・メトロポールはトップリーグ優勝3回、カップ戦優勝6回という立派な成績を収めている。あのヴァイッド・ハリルホジッチが、1998年から2002年までここの監督を務めていたのは有名な話だ。彼は00年にクラブを1部に復帰させると、翌01年には3位にまでチームを躍進させてチャンピオンズリーグ(CL)のプレーオフ出場権を獲得(その後、パルマとのプレーオフにも勝利してCL本戦にも出場)。同年の年間最優秀監督に選出されるとともに、リール市民栄誉賞も受賞している。

 そんな日本のサッカーファンとは縁浅からぬリールなのだが、この日はとても観光する気分にはなれなかった。たまった洗濯物を洗ってから、ちょっとベッドに横になる。気がついたのは3時間半後の19時近く。どうやら知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたようだ。とりあえず買い出しを兼ねて、ホテルの周囲を散策。気になったのは、やたらとニセモノ寿司屋が多いこと、そして奇妙なまでに静かなことだ。明日ここで試合を行うロシアとスロバキアのサポーターも、すでに到着していると思うのだが、気勢を上げる様子はまったく見られない。明日は滞在5日目にして初のチケット観戦ということで、非常に楽しみにしていたのだが、果たしてどれだけ盛り上がるのかいささか心配になってしまった。

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