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【無料記事】献本御礼『アオアシ5』小林有吾著 取材・原案協力 上野直彦

今回はサッカーマンガをご紹介。『週刊ビッグコミックスピリッツ』に連載中の『アオアシ』は、Jクラブの育成年代にスポットを当てた異色作である。

「取材・原案協力」でクレジットされている上野直彦さんは、もともとは女子サッカーのエキスパートであり(先月の徹マガにもご登場いただいた)、最近はスポーツビジネスの領域でもご活躍されている。その一方で「マンガ原作者」としての顔を持ち、あの小池一夫先生に弟子入りした経験も持っている。

そんな上野さんには大変申し訳ないのだが、私は当初、この作品になかなか食指が動かなかった。理由は3つ。これまでほとんど育成年代の取材をしていなかったこと。絵柄があまり好みでなかったこと(上手い下手でなく、あくまで好みの問題だ)。そして最近、マンガを読む習慣をすっかり失っていたこと。とはいえ、せっかく献本していただいたので、この5巻から読み始めることにした。

感想は「純粋に面白かった!」。どこに面白さを感じたかというと、描写の隅々に散りばめられたリアリティである。育成年代の選手の日常、トレーニングのメニュー、指導者の葛藤、そしてチーム内の序列や人間関係、などなど。さすがは上野さん、よく取材している。と同時に、取材した「素材」を漫画家に伝えるスキルも高いのだろう。

以前のインタビューで上野さんは「読者のリテラシーがあがっていると感じます」「サッカーを十分に理解した上で漫画を描かないとどこかでボロがでる」と語っていた。そうした現状認識が綿密な取材を下支えし、この作品の質の高さに反映されているのだろう。育成の現場に関心がある人には、特にお勧めだ。定価552円+税。

【オススメ度】☆☆☆★★

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