宇都宮徹壱ウェブマガジン

それは知らなかったイスラエル!  現地で発見したあれこれについて


(C)Tete_Utsunomiya

 イスラエルでの取材を始めて1週間が経過した。現地には10日間の滞在予定で、そのうち現地の国内リーグの取材は2試合。純粋に「サッカーの取材」という意味では、決して効率が良いとは言えない。が、もともと観光スポットには事欠かない上に、アジアともヨーロッパとも異なる特殊な土地柄ゆえ、日々これ発見と驚きの連続である。旅の模様については、来月あらためてお知らせすることとして、今回は現地で発見したあれこれについて、お伝えすることにしたい。

●とりあえずテロの脅威はなし

今回のイスラエル行きについては、家族や友人を含め各方面にご心配をおかけした。私自身、1月上旬にテルアビブでテロ発生というニュースに接して若干ビビっていたことは告白せねばなるまい。ところが実際に当地に来てみると、治安面でのピリピリした感覚というものはまったく感じられなかった。セキュリティチェックも鉄道を利用したときだけで、それもかなりいい加減。私が3日間過ごしたテルアビブはいたって平穏で、少なくとも「テロの脅威」というものは一切感じられなかった。

●とにかく物価が高い!

治安以上に不安を感じたのが、当地の物価の高さである。ホテルは1泊1万円以上を払わないとまっとうな部屋を確保できない(ここをケチってえらい目に遭った)。現地のSIMカードが9000円、タクシーは10分くらい乗って1500円、博物館のチケットも同じくらいだ。食事も普通に食べてビールを頼めば、3000円くらいは軽く飛ぶ(マクドナルドの普通のセットで1300円したのには驚いた)。ちなみにアルコール類もそこそこ高くて、ビールの小瓶が240円、ワインは2000円から、といった具合。

●「イスラエル料理」は存在するのか?

では、現地では何を食べているかというと、ピッツァ、タコス、中華といったエスニック料理ばかり。テルアビブ在住の方と「イスラエル人の家庭料理」ということでピタ(現地のパン)とフムス(ヨーグルト状のもの)を食べてみたが(わりと美味しかった)、パレスチナ在住の方にその話をすると「それはもともとパレスチナの食べ物です!」と言下に否定された。「イスラエルは1948年にできたばかりの国だから、オリジナル料理なんてないんです」とのこと。確かに「イスラエル料理」を謳ったレストランは見かけなかった。

●シャバット(安息日)は動けない!

イスラエルを旅していて、最も厄介なのが「シャバット」と呼ばれるユダヤ教の安息日である。金曜日の夕方から土曜日の夕方まで、ほぼすべての店がシャッターを降ろして、公共交通機関もストップする。当然、金曜の夕食には困るし、土曜の昼はバスに乗って観光することも叶わない(タクシーは動いているが、前述したとおり高い)。ちなみに日曜日は、こっちの人にとっての「月曜日」なのでオフィスは空いているが、多くの美術館や博物館は休館日となる。

●国内リーグはかなりの盛り上がり

国内リーグのイスラエル・プレミアリーグは、土曜日の試合は夜キックオフが圧倒的に多い。日本でスケジュールを調べていた時、「なぜ昼の試合がないのだろう?」と思っていたのだが、すべてはシャバットの影響であった。安息日が明けると、人々は三々五々スタジアムに集まり、サポートクラブを献身的に鼓舞し続ける。名門、マッカビ・テルアビブのスタジアムは1万5000人にも満たない小ぢんまりとした施設であったが、試合中の熱気はまさしくヨーロッパのそれであった。

●意外と英語が通じない

イスラエルの公用語は、ヘブライ語とアラビア語。いずれも文章は右から左に書かれており、素人には判読不能である。住所や道路標識は基本的に英文が併記されているが、スタジアムや店の表示はヘブライ語のみであることが少なくない。バスの行き先についても同様で、グーグルマップがなければ途方に暮れるところであった。また、流ちょうに英語を話す人が少なかったのも意外であった。

●国境は意外とすんなり通過

イスラエル側のエルサレムから、パレスチナ側のヨルダン川西岸地区へはバスで移動。国境の検問ではどんなチェックがあるのだろうとドキドキしていたら、何とノーチェックで通過することができたので拍子抜けした。あとで知ったことだが、パレスチナ側からイスラエルに入るときには、厳しいチェックが入るようだ(パレスチナ人の入国を厳しく制限しているため)。これについては、イスラエル側に戻るときに注意深く観察することにしたい。

●パレスチナに雪が降る!

ヨルダン川西岸地区の中心都市であるラマッラに到着して、まず驚いたのが現地の寒さ。気温が1度にまで下がることがあり、滞在中は時おり小雪が舞うほどであった。「寒い中東」というのはこれまで経験したことがなかったし(厚着しているアラブ人も初めて見た)、「東京よりかは暖かい」とも聞いていたのでダウンジャケットは自宅に置いてきてしまった。そんなわけで当地では、寒さと悪天候との戦いが続いている。

●「え、スタンプ押さないの?!」

そして極めつけの誤算がこれ! そもそも今回、イスラエル取材を思い立ったのは、パスポートの期限切れのタイミングを見計らってものであった(パスポートにイスラエルのスタンプがあると入国できない国があるため)。ところがイスラエル入国時にはスタンプは押されず、入国カードを渡されただけであった。これもあとで知ったことだが、入国スタンプは最近になって廃止されたとのこと。さすがにこの事実を知ったときには脱力した。

とはいえ、イスラエルの旅はまだ続く。この旅が思い出深く充実したものとなるよう、もうひと踏ん張りすることにしたい。

<この稿、了>

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ