アカデミーレポート:(無料記事)2024 全国高校サッカー選手権長崎県大会 レポート~過渡期の中にある長崎高校サッカー界。安定感のあった総附と食い下がった創成館~
今年の「令和6年度(第103回)全国高等学校サッカー選手権大会 長崎県大会」。終わってみれば、数年ぶりに長崎総合科学大学附属高校が突出した強さで制した大会だった。
今年の県内高校サッカーは国見高校と長崎総科大附の2強が頭一つ抜けており、辛うじて長崎日大が食らいつく程度で、その2強間でも新人戦・高総体両方の直接対決で勝利している国見がやや上という勢力図だった。
その国見が、大物食いを得意とする鎮西学院に準々決勝でまさかの敗退。この時点で長崎総科大附一強の図式が出来上がったと言っていい。
逆に準々決勝で個の能力が高い選手がそろう海星を破った長崎総科大附は、ボールを動かすスタイルでは県内トップレベルの九州文化学園と対戦。タイトな守備と縦への推進力で九文を打ち破り決勝へと進出した。
決勝の創成館戦でもスタイルを徹底して戦い、スペースの生まれた試合終盤には宇土尊琉のゲームメイクで完全に試合をコントロール。相手の創成館に付け入る隙を与えずに盤石の戦いぶりで優勝を手にした。坂本錠が思った以上にマークされて苦しんだものの、長崎総科大附らしい実に手堅い戦いぶりでの優勝だった。
決勝戦で敗れたものの創成館は、地道だが着実な勝ち上がりで健闘した。正直、今年のチームは怪我人の多さもあってチーム作りに難航していたが、田原昊仁郎の攻守両面での奮闘もあって決勝まで見事に勝ち上がった。決勝でも前半は手堅い戦い方でこう着戦に持ち込んだが、後半開始早々にまさかの2失点。そこからはリスク覚悟で攻めに出たため計4失点で敗れたが、大会前の状況を思えば大健闘と言えるだろう。
選手権予選では初のベスト4進出を達成した九州文化は、有光亮太監督が立ち上げたサッカークラブの1期生がちょうど3年生としてプレーすることもあり、個・戦術ともに高く、大会得点王をサイクハンター夏壱が獲得したとおり、特に攻撃面の充実が光った。準々決勝で長崎日大を破るなど確実に成長し続けており、今後の県内サッカーで有力なチームとなるのは間違いないだろう。
同じくベスト4の鎮西は、元から選手の粒が揃っていることもあって、スカウティングがハマったときは本当に強さを発揮する。チームとして器用さを持つからこそ、時にまとまりを欠くこともあるが、今大会は国見を破り大敗波乱の立役者となった。それだけに準決勝の創成館を破って勢いのまま決勝戦へ向かいたかったのが本音だろう。
ここ数年、県の高校サッカーは選手数の大小、個の優劣などで分断化が進みつつあり、今はその分断が確定的となる前の過渡期の段階だ。恐らく今後は「強い」とされる学校は何とか子どもが集まるだろうが、そうでない学校は選手の確保が難しくなり、「楽しむ」割合を高めざるを得なくなるだろう。
この分岐点とも言える中で、各校がどのような道を進むのか。そのあたりも考えながら、今度の県内高校サッカーの動向を注視しつつ、今は長崎総科大附の2年連続10度目の優勝という快挙を讃え、本大会での活躍を期待したい。
reported by 藤原裕久