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アカデミーレポート:*無料記事 V・V長崎U-18の苦戦。求められる環境改善と、ラスト3試合での逆転2位進出

V・ファーレン長崎U-18が苦戦している。
2021シーズンに九州プリンスリーグを初優勝。翌22シーズンも最後まで優勝を争い2位でシーズンを終え、プレミアリーグ参入こそならなかったものの、2年連続でプレミアリーグ参入戦へと進出した。昨シーズンは終盤にまさかの失速でプレーオフ進出を逃し3位でシーズンを終え、今年はリベンジを誓ってスタートしたはずだった。

ここ数年で最も苦しい中で戦いを続ける原田武男U-18監督

序盤は好調だった。池田誉や伊藤小次郎といったタレントが卒業したものの、原田武男U-18監督は「今年のチームは去年よりも個の部分では苦しいが、だからこそチームで戦えれば個に頼らないで戦える」と組織で戦うことを意識。故障や体調不良で欠場が相次ぎ終盤に大失速した昨年の反省も踏まえたチームは、今年のU-18はほぼ怪我なくシーズンに入ることができた。

開幕戦から5月の第5節までチームの戦績は4勝1分けで首位。だが、このあたりからチームは徐々に調子を崩し始める。第6節にアビスパ福岡に敗れリーグ2位となったチームは5月末からの九州クラブユースで予想外の苦戦。5位でどうにか勝ち抜いたものの、危うく6年ぶり本大会出場を逃す寸前まで追い込まれている。

その後も、長崎総科大附、主力級も起用してきた大津セカンド、日章学園に敗れたU-18は、アビスパ戦からの通算でまさかのリーグ4連敗。その後も思うように調子を上げられず13節の飯塚戦、そして前節の大分トリニータ戦にも連敗してしまった。現在の順位はプレミア参入戦進出圏外の4位。5位の長崎総科大附に勝ち点1にまで迫られることになっている。

苦戦、最大の要因は「フィジカル(原田監督)」だ。

序盤戦以降、相次ぐ故障者のためにまともにメンバーを組めない試合が続いているのだ。このあたりの理由としては、環境面の影響が大きい。田中町の人工芝グラウンドは人口芝の状態が劣悪なため、今年に入ってアカデミーは国見まで移動して練習をすることが増えている。スタッフは移動時間はそう変わらないと語るが、実際の影響具合にエビデンスがあるわけではない。

また、トップチームが有する国内有数のフィジカルトレーニング設備について、当初はアカデミーも利用可とされていたが、コロナ感染の懸念から実際はほとんど利用できていないことも影響がありそうだ。田中町のグラウンドの状態が劣悪で、フィジカル施設も利用できない現状は県内トップのユースチームとしては実に厳しい。

長崎は九州内でも決してスポーツ施設が充実している方とは言えないが、それでも場所によっては整っているし、近年では創成館高校や九州文化学園などが校庭を芝生化した。だが県内トップであるはずのV・ファーレン長崎U-18は、自前の練習場を求めて週2~3回の割合で国見まで移動し、フィジカルトレーニング環境も存分に活用できていないのである。

このあたりを踏まえれば、現場のせいだけとはできないだろう。練習環境の面では言えば、長崎総科大附とともにプリンスリーグ所属チームの中でも厳しい部類に入る。実に嘆かわしい状態である。

U-18は残るリーグ3試合で逆転の2位進出を狙う。12日に首位のアビスパ福岡、11月23日に大津セカンド、11月30日に日章学園。2位につける日章との勝ち点差は現在3で、3位の大分は1試合消化試合が少ない状態で勝ち点2差。

まだまだベストな状態とは言えないU-18だが、この逆境を乗り越えた逆転の2位進出を期待するとともに、アカデミーを巡る環境を整備して、本当の意味で育成クラブと呼べるような対応を期待したい。

reported by 藤原裕久

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