アカデミーレポート:幻の最強世代だった今年のU-18は、なぜリーグを不本意に終えたのか(後編)~この悔しさを忘れない~
V・ファーレン長崎U-15の過去最強世代が最上級生となり、歴代最強の一角と言われていた今季のV・ファーレン長崎U-18。だが、彼らは最大目標であるプレミアリーグ昇格を達成できず、プリンスリーグ九州を3位で終えることになった。前編となる前回は、リーグ序盤から第16節でまさかの敗戦を喫するまでの流れを追った。今回はリーグ残り2試合の戦いから、最強世代が不本意な結果でリーグを終えた理由に迫ってみたい。
アカデミーレポート:幻の最強世代だった今年のU-18は、なぜリーグを不本意に終えたのか(前編)~リーグの流れを変えた1プレーの重み~
前節の九州プリンスリーグ第16節で、V・ファーレン長崎U-18は下位の九州国際大附属高校にまさかの引き分けを喫したものの、まだ首位をキープしていた。この時点で2位と3位につける鹿児島城西と日章学園は最終節で対戦する。次の試合にしっかりと勝てば、2位以内は確実にキープできる。
だが、勝たねばならないプレッシャーの中でU-18は敗れた。勝てば2位以内をキープできるという気持ちが、勝たねばならない焦りになったのかチャンスを作るが、2度に渡ってシュートがバーを叩くU-18に対し、アビスパ福岡U-18は前線からのハイプレスとロングボールを徹底し前後半に1点ずつを得点。0対2で試合を終えた。
敗れたU-18はリーグ残り一節で、長くキープしてきた首位から3位へと陥落し、一方で勝利した城西と日章が1・2位への浮上。これにより最終節で長崎が勝ったとしても、最終節で直接対決する1位の城西と2位の日章が引き分ければ長崎の3位は確定することが決まった。城西と日章のどちらかが直接対決で負ければ、負けた方が長崎に逆転され3位に転落するとはいえ、第17節まで有利な条件と思われた、最終節のカードが不利な条件へと姿を変えた。
「それでもね、高校生が狙って引き分けをやるって難しいと思うんですよ」
最終節を前に原田武男監督はそう語った。今にして思うと、そう思って戦うしかなかったのだろうと思う。この試合の2トップは、七牟禮蒼杜と池田誉。誰もが期待した2トップだ。U-15からの主力と、U-18から加わった主力がそろったのは3年間で初めてである。
試合では立ち上がりこそチャンスを作ったU-18だが、相手の大分トリニータU-18は好守ともに安定していた。それでも落ち着いてボールを動かし続けたチームは後半に得点を奪い、守っては相手を無失点に抑えて勝利した。試合内容は決して会心とまではいかなかったが、最近の2試合よりもずっと勝ちたい気持ちが見えるものだった。
そして、城西と日章の対決は無得点ドローで終わり、U-18のシーズンが終わった。
「2年前に優勝、去年は2位で賞状をもらった。今年は3位。なぜこうなったのか考えてほしい。何かが足りない部分があった。これをまたやったら同じことが繰り返される。1~2年生はこれを忘れないでほしい。(七牟禮)蒼杜と(西村)蓮音はトップに昇格する。海外へ行く者もいるが他は大学へいく。ここで学んだことを次へ生かしてほしい。この悔しさはグラウンドで返すしかない」
原田監督はシーズンが終わったばかりのU-18の選手たちにそう語りかけ、キャプテンの七牟禮は声を震わせながらこう続けた。
「今日は全ての選手が力を出したと思う。でも最後だから(力が出た)ではなく、これをスタンダードにしてほしい。悔いが残るシーズンになってしまった。サッカーだけじゃなく、最後は私生活が(結果に)出てくる。そうしないとどうなるか、1、2年生は考えてほしい。この悔しさを忘れないように」
その言葉は1、2年生に向けたものだったのか、自身へ向けたものだったのか。
故障者が出るのは仕方がない。3月の海外短期留学もチーム作りに若干の支障は与えたが、それ以上に選手の大きな経験になった。だが、リーグ終盤の体調不良者の続出は大きくチームの足を引っぱった。
高校年代の指導者は口を揃えて、この年代の選手が最も成長する時期を「夏から」と言う。U-18はまさにその時期に故障者が増え、そこへ体調不良者の続出が拍車をかけた。最もチームが伸びる時期を逸してしまった。それでも最後まで高いレベルの戦いを続けたU-18はやはり地力が高かったのだ。
それだけに余りに悔しい結果である。ならばせめて、彼らが今年の反省を自分たちの財産にしてもらいたい。
「この悔しさを忘れないように」
U-18で今年この言葉を聞いたときの気持ちを忘れず、将来へ生かしてもらいたい。
今はただ、それを願うばかりである。
reported by 藤原裕久